624.肉食ダイエット(2013.6.17掲載)
ダイエットに関する識者のコメントで、「長い人類の歴史で食事をお腹いっぱい食べられるようになったのはごく最近のこと。だから腹八分目がいいに決まってる」というフレーズを時々耳にする。 たしかに、飽食ニッポンなどと揶揄されるようになったのは1980年代以降30年前後の話であり、人類はず〜っと空腹だった。 ならば、空腹時代の暮らしを取り入れれば、自然の摂理に叶ったダイエットができるのではないかと登場したのが「パレオダイエット」。 パレオとは、パレオリシック(旧石器時代)の略で、250万年前から農耕が発達した1万年前までの原始人の食生活を再現するという気宇壮大なダイエット法。 具体的には、まず炭水化物を断つ。農耕以前だから当然米、麦はない。だからご飯もパンもパスタも御法度。これで狩りをする体力が維持できたのかと心配するが、当時は1日の摂取カロリーの55%を肉から得ていたらしいから大丈夫(現代の日本人は60%を炭水化物から得る)。 そして、牧草を食べて育った牛、豚、羊の赤身肉を食らう。肉食=不健康というイメージが定着しているが、肉の代わりにパンやアイスクリームを食べる方がよっぽど体に悪いというのが本法の根本理念。 そう、パレオダイエットの基本は肉食礼賛なのだ。人類の祖先が石器を手に肉食を獲得して以降、体格は向上し脳のサイズは3倍に増大した。人類の進化は肉のおかげともいえる。 ただし、肉の調理に塩、砂糖、調味料、コーン油、大豆油などは使えず、基本的な味付けは香辛料やナッツオイルを利用するのみ。実践してみると、これが一番きつい。とにかく塩がほしくなる。 5月26日に放送されたNHKスペシャル「病の起源 脳卒中」でも、現代人の塩分過多が指摘されていた。麻薬的な嗜好性を持つ塩を断つのは困難だが、原始の生活を守るアフリカのピグミー族は塩分摂取が少ない。だから、加齢による血圧上昇がなく、肉食なのに脳卒中とは無縁だと。 なるほど、原始人ダイエットは肉食なのに健康的。ただし、二度と実践したくない。 塩以上に白めしが恋しくて、どうにも我慢できなかったのである。
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