625.怒りのマネジメント(2013.6.24掲載)
今から30年前のある日のこと、大学生だった私は評判の悪い先輩の仕打ちに怒り、ボコボコに殴るつもりで先輩のいる研究室を目指していた。その時、偶然廊下ですれ違った後輩N君が私の鬼の形相に異常を察知。事情を話すとこんな言葉で怒りを鎮めてくれた。 「あの先輩とあなたは土俵が違います。横綱が十両の土俵に下りていくことはありませんよ」 私は決して横綱ではないが、N君には心から感謝している。当然だが、怒りにまかせて先輩を殴らなくてよかった。まさに、N君から怒りのマネジメントを処方されたのである。 人間の喜怒哀楽のうち、扱い方を誤ると最も害のあるやっかいな感情が怒りである。だから、怒りをコントロールすることで生まれるプラス効果に着目し、2008年に日本アンガーマネジメント協会が設立された。 協会が説く怒りのマネジメント法を紹介する。絶対にやってはいけないのが、イラッとした時に反射的にキレること。この反射を抑えるテクニックがいくつかある。 その1.怒りに点数を付けて数値化すると気持ちが落ち着く。例えば、不愉快でうっとうしい…1〜3点、イライラして腹が立つ…4〜6点、激怒で爆発寸前…7〜9点、爆発し震えが止まらない…10点。 その2.怒るか怒らないかの境界線を決める。目安は、「後で後悔するかどうか」。怒って後悔するということは、もともと怒る必要のないこと。 その3.いったんその場から離れる。時には逃げることも得策。 その4.気持ちを落ち着かせる魔法の言葉を用意し、心の中で唱える。冒頭N君の「土俵が違う」は、いまだに魔法の言葉として重宝している。 怒りのパワーをプラスに変えることで、ビジネスの活力が生まれるのであれば言うことなし。そして、時にはゆる〜く怒りを鎮めたい。そんな魔法の言葉をひとつ。 写真集「どこへいくカッパくん」の著者アランジアロンゾが、カッパくんのことを評した名言。 「どうでもいいことはたくさんあって、たいていはどうでもいいことなので、カッパくんはそうやって毎日暮らしているのだけど、どうでもよくないこともやっぱりあって、『ま、いろいろあるさ』なカッパくん」 怒りのマネジメントに役立てば幸いである。
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