630.クール・ジャパン食(2013.7.29掲載)
日本を海外に売り込む「クール・ジャパン」戦略。6月12日に「クール・ジャパン推進機構」設立法案が参院で可決され、国が500億円を出資してくれることになった。 このプロジェクトの目玉が「食」であり、2009年に2.2兆円だった日本食の市場規模を、2020年に6兆円まで高める目標を掲げている。 思えば筆者が初めて洋行した30年前、海外で定着していた日本食は醤油、カニかま、カップ麺の3つ。以来、着実に現地に溶け込み、北米では「キッコーマン=醤油」、南米では「マルちゃん=カップ麺」、ベトナムでは「エースコック=カップ麺」という感じで親しまれるようになった。 そして、今回クールなのは外食である。海外の日本食レストランは、現在5万5000店舗。3年で2倍に増え、回転寿司、ラーメン、カレー、餃子、焼き鳥、たこ焼き、お好み焼き等、さまざまな業態で行列ができている。 ここでポイントとなるのは、これら日本食レストランの経営者の8〜9割が日本人以外であるということ。現地の嗜好をいかに日本食に反映させるかがヒットの肝なのである。 キムチ味のサーモン、コリアンダー風味の豆腐、牛肉をのせたチリ・ビーフ・ラーメン、テリヤキ・サーモン・ソバ、ダック・ギョーザ…。和食の魂に縛られていたのでは、こんなメニューはひらめかない。 7年前の「スシポリス」騒動の轍を踏んではいけないのである。 スシポリスとは米国マスコミの手による造語で、2006年に農水省が発表した海外の日本食レストランに対する認証制度を皮肉ったもの。本来の日本食とかけ離れたメニューを提供する店を区別しようとしたのだが、猛反発をくらって頓挫した。 食文化を規制するのは、どう考えても無理である。 幼時、年2回の贅沢だったデパートのナポリタンスパゲティ。イタリア料理の王道から大きく外れた昭和40年代の異端児であるが、ナポリタンがあってこそのイタメシである。 ナポリタンもクール・ジャパン食なのである。
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