632.獲りすぎニッポン(2013.8.19掲載)
近年、マグロやカツオが漁獲規制の対象となり、日本の魚食文化に少なからず影響を及ぼしているが、これまで獲りすぎてきた日本の漁業にとっては当然の報いなのかもしれない。 最新の漁法で獲れるだけ獲って帰港するも大量水揚げ故の安値で薄利となり、穴を埋めるべくまた獲りに行く。だから資源が枯渇し、規制対象となる。 そんな、安定供給と欲望の間で揺れた挙げ句に憂き目を見るという本末転倒な事例を、3つ紹介する。 まずはご存知ウナギ。 1960年代に200トンを超えていたシラスウナギ(ウナギの稚魚)の国内漁獲量が、今年は輸入物も含めてたったの12トン。1kgあたり250万円という銀より高い値がついてしまった。 ニホンウナギの稚魚は60年代をピークに減少し、代替種として開拓されたヨーロッパウナギの稚魚もまた減少。気軽にうな重が食べられるようにと世界を駆けてくれた商社マンのビジネス魂が、あだとなってしまったのだ。 次いでカツオ。 日本のカツオ巻き網漁船の技法は世界一である。特に、プリント技術で製造し、2億円もするという「結び目のない網」が秀逸。結び目がないから海中に投入後の落下速度がものすごく速く、カツオの群れをもれなく囲い込む。 もれなく獲るから大漁となり、さらに、海面近くの魚と水深200mの魚を同時に獲るから品質がばらつき魚価が下がってしまうという悪循環。 最後にイカ釣り。 燃油高騰による一斉休業が話題となったイカ釣り漁業であるが、あの集魚灯、実はそれほど多くの光量を必要としない。昔は、ローソクや50Wの裸電球で操業していたらしく、現在の2〜4割の光量で十分。 つまり、過剰な光量は他船との競争の結果。誰かが抜け駆けして光量を増やすとイカがそっちに集まるため、競うようにして明るくなってしまったのだ。 以上3例。資本主義漁業を追求した果ての衰退は何とも哀しいが、漁業従事者20万人、平均所得200万円という現実は動かない。 飽食ニッポンを支えてきた、獲りすぎニッポン。資源管理のための漁獲規制を受け入れ、しばらくは辛抱するしか策がないのかもしれない。
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