644.鹿カレー(2013.11.11掲載)
クマやサルなどの野生動物が平野部に出没し、住民や農作物に被害を及ぼすというニュースを最近よく耳にする。 まあ、県庁所在地の真ん中に暮らす我が身には無縁のネタだろうと思っていたのだが、先日、夜8時の住宅街でイノシシに遭遇した。 幹線国道の脇道を歩いていると前方から黒い塊が来襲。その瞬間、野良犬に突進され太ももに噛みつかれた幼時の記憶がよみがえり、不覚にもフリーズしてしまった。幸いイノシシは目前で直角ターンしてくれ、事なきを得たが…。 翌週、友人が近くの幼稚園児のために育てているサツマイモ畑をイノシシに荒らされた。「大きくなあれ」と目を輝かせながら水やりをしていた園児たちを思うとやるせない、と友人。 さらに最近、森林学の大家である知り合いの大学教授が、林業におけるシカ被害の対策委員長を命ぜられたとぼやいていた。「シカのことなど全くわからないから、林学の立場からアドバイスするしかない」と語る教授だが、ちょっと風貌がムツゴロウ先生に似ているから任命されたのかも。 そこで、身近に頻発する野生動物被害を鑑み、現状を勉強することにした。 まず、野生動物による農作物の被害額は年間200億円。意外なことにトップはシカの80億円。次いでイノシシ、サル、クマ。戦後、シカは絶滅寸前状態で保護政策がとられていたから、戦後の農業はシカがいないという前提で防除対策など皆無。 なのに、ニホンジカの頭数は261万頭(北海道を除く)で、年間捕獲数27万頭という現状では、2025年に500万頭まで増えてしまう。よって、捕獲数を60万頭まで増加させる必要があるのだ。 ここで重要な点は捕獲したシカを「おいしく食べること」である。欧米では高級食材のシカ肉だが、日本では不人気。脂肪分が0.3%と極めて低く(和牛は25.8%)、4.6mgもある鉄分がレバーのような風味を出してしまう(和牛の鉄分は2.0mg)。 まあ、逆に考えれば低脂肪高鉄分のヘルシー食材なのだから「天然鹿カレー」の販売を開始した「CoCo壱番屋」を見習おうではないか。 花札の10月札で鹿がそっぽを向いていることから「シカ10」→「シカト」という言葉が生まれたわけだが、我々もシカトしないでシカ肉の利用法を考えねばならないのである。
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