646.ヒット活(2013.11.25掲載)
科学技術庁(当時)の監修で1960年に刊行された「21世紀への階段」が53年ぶりに復刊され、話題になっている。 この本は、当時の第一人者らが「約40年後に実用化している」と予想した技術をまとめたもので、医療、原子力、宇宙、気象、交通など12の分野で135項目が記されている。 このうち、現在実現しているのは4割くらい。「携帯電話」「テレビ電話」「月面着陸」「平均寿命80歳」などはどんぴしゃりだが、「火星に居住」「細菌やウイルス感染の根絶」「人工冬眠」などは大外しである。 そして、インターネットを想起させるような記述はどこにもない。真のイノベーションは、人知をはるかに越えたところから生まれるものなのだ。 食品関係の技術はどうか。「完全屋内栽培の野菜工場」と「高周波調理器(電子レンジ)」が大当たりで、「微生物による人工食糧の合成」がやや当たり(調味料の発酵生産)。大きく外したのが「1日の家事を完全にこなす電子家政婦」。電子家政婦なんて、100年経ってもアニメの世界でしかあり得ないネタだ。 まあ、食品は身近すぎて加工技術の進歩が読みづらい分野かもしれない。なにせ来年のヒット商品すらわからないのだから。 思えば「21世紀への階段」が世に出た1960年は、加工食品の黎明期であった。チキンラーメンが1958年、インスタントコーヒーが1960年に発売され、食卓が変わる空気に充ち満ちていた。新しい食品がどんどん出てきそうな気配だった。 確かに、その後1968年にボンカレー、1971年にカップラーメンが登場し、食品業界はますます賑やかになるのだが、画期的な技術革新はここまで。以後の大型商品は、企画ありきのマーケティング戦略商品がほとんどなのだ。 ふと、日経消費インサイト誌が発表した2014年ヒット商品予想を見た。1位東京五輪、2位消費増税、3位低燃費車ときて、15位に健康増進食とあった。体にいい菌類を食卓に取り入れる「菌活」、腸の状態を整える「腸活」に注目との解説。 なるほど革新技術がない時代はマーケティングに頼るしかない。「ヒット活」に精を出すしかないと痛感した次第である。
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