647.元祖焼肉(2013.12.02掲載)
前号「ヒット活」で、半世紀前に生まれたチキンラーメンやインスタントコーヒーなどの加工食品を振り返ってみた。そこで本稿では思いっきり過去に遡り、人類最古の加工食品を検証してみる。 最古の加工食品は「焼肉」である。そして、この「食物の加熱」なくして人類の進化はなかったという説がある。 ハーバード大学のランガム博士は、約180万年前にホモ・エレクトスが火を使う料理法をマスターしたことで、人間が「大きな脳、小さな歯、短い腸」という特徴を獲得したと主張している。 人間は他の動物と違い、野にある生の食べ物では生きていけないと考えた博士は、チンパンジーの食物で入手できるものを全部食べてみた。それらは繊維質で水気がなく甘味に欠け、固くてまずかった。 固いということは、咀嚼に時間がかかるということ。チンパンジーは日中の半分くらいを咀嚼に費やしているから狩りの時間は20分くらいしかない。そこで加熱調理である。 加熱で食物がやわらかくなった結果、咀嚼に費やす時間が1日1時間程度になり、狩りに回せる時間が4、5時間に増えた。獲物が増え、さらに肉が食べられるようになり体格が向上した。 体格の変化だけではない。消化の良い加熱品を食べ続けることで、腸が小さくなった。短縮した腸はエネルギー効率が良く、余ったカロリーを脳に振り向けることが可能となり、大きな脳に進化したのだ。 生よりも加熱した方が食物から得られるエネルギーが多くなることも、イモ類と肉の実験で証明されている。現代人の私が月に数回襲われる「焼肉食べたい発作」は、体がエネルギーを求めていたのだ。 次に新たな加工食品が生まれるのは、かなり時を経た約3万年前の「パン」。 そう考えると、焼肉が人類に及ぼした影響はあまりに大きいのである。
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