648.濡れ衣炭水化物(2013.12.09掲載)
先日、うどんを主力商品とする加工食品メーカーの開発室を覗いたのだが、そこに居並ぶ研究員がほぼ全員巨漢だったのには驚いた。毎日うどんの試食でそうなってしまったのか。炭水化物が悪者なのか。 確かに「炭水化物ダイエット」なるカテゴリーがあり、白米やうどんの立場が悪くなっているのは事実である。ただ、根拠に乏しい。 肥満成人が7200万人以上といわれる肥満大国アメリカで、この謎を解く実験が始まろうとしている。すなわち、肥満の原因はカロリーか炭水化物かという競合する2つの仮説の検証である。 カロリー説…摂取カロリーと消費カロリーのアンバランス、言い換えれば食べ過ぎか運動不足が肥満の原因という至極当然の説。ただ、食事量を減らして運動量を増やすというこれも当然の処方箋がありながら、いっこうに肥満人口が減らないのもおかしな話。 炭水化物説…炭水化物を摂取すると血糖値が上昇し、その刺激でインスリンが放出される。インスリン濃度が高いとブドウ糖を優先的にエネルギー源として使用し、脂肪が体内で燃焼されずに蓄積する。だから太るという説。 検証実験は、消費カロリーと摂取カロリーが正確に一致する状態で、炭水化物の比率が50%と5%の食事で体重がどう変化するかを測定する。ただ、正確な結果が出るには3年を要するらしい。 じゃあ、今夜の炭水化物はどうすればいいのか。締めのラーメンが肥満の真因なのか。 宴席の締めに炭水化物が欲しくなるのは、アルコールの代謝によって体内のブドウ糖が消費されるから。さらに、ビール由来のカリウムが体内に入ったことで、バランスを取るべく塩分の高いラーメンに導かれる。 高カロリーで炭水化物たっぷりのラーメンを食事の後に爆食するのだから、二つの説の真偽以前に自身不摂生の問題である。 濡れ衣炭水化物に詫びつつも、忘年会シーズン突入なのである。
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