649.スイカの種(2013.12.16掲載)
幼い頃、「スイカの種を食べると腹から芽が出るぞ」とよく脅された。 実際、動物の消化管を通過した植物種子のほとんどが発芽する能力を維持しているらしく、腹から芽は出ないにしても「消化が悪いから種は出しなさい」という親心は間違っていない。 種の立場からすると、子孫繁栄のために必死で動物の消化酵素に抗っているわけで、そうやすやすとエネルギー源になってはくれない。 米国農務省のノボトニー博士らは、この攻防に研究のヒントを得た。進化によって消化されにくい構造になったナッツや種子は、他の食品と同じようなカロリー計算が当てはまらないのではないかと。 一般的な食品のカロリーは、タンパク質×4、炭水化物×4、脂肪×9の合計値で導かれる。例えば、シンプルなのに高カロリーなミスタードーナツのオールドファッションは、タンパク質3.4g×4=13.6、炭水化物29.9g×4=119.6、脂肪20.1g×9=180.9の合計で、計算上は1個314kcalとなってしまう。 そこでノボトニーの実験。 被験者にさまざまな量のアーモンドを食べてもらい、それ以外の食事は完全に同じにして消化吸収されずに便と尿に出てきたカロリーを計測したところ、アーモンド1食分が129kcalとなった。表示されている170kcalを大きく下回ったのだ。やはり種子系食品は消化を免れるように進化しているらしい。 種子の例以外でもいろいろある。消化の悪い生のサツマイモを食べたマウスは体重が減り、全粒小麦粉パンを食べた被験者は、精白小麦粉パングループに比べて摂取カロリーが10%少なくなった。 要するに、加工度の高い食品より生の食材が低カロリーになるわけで、お腹の都合さえ良ければ、「生食ダイエット」も考えられなくはない。 飽食の今日、スイカの種を食べるという選択肢もあると思うのである。
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