654.遺伝子組み換え作物の是非(2014.1.27掲載)
年に1回、職場で「社員対抗新春ディベート大会」を開催している。 ルールは「ディベート甲子園」に準じて肯定側否定側が順に立論を述べ、その後質疑応答。試合に出ない参加者が審査員となり、判定を下すシステムだ。 ディベートを通してビジネスに於ける交渉力を磨くことが目的だが、情熱はあるけど熱くなく、どんなに突っ込まれても冷静な姜尚中先生のごときトークはかなりむつかしい。 テーマは毎年公募するのだが、いくら議論を重ねても結論が出ない「定番テーマ」なるものがある。「首相靖国参拝の是非」「徴兵制の是非」「消費税増税の是非」「幼児教育の是非」など。 中でも食品業界ネタとして毎度迷宮に潜り込んでしまうのが、「遺伝子組み換え作物の是非」。学会内ですら40年前と同じ議論を繰り返しているのだから…。 肯定1.遺伝子組み換え作物の利用で穀物の収穫量が2、3割増え、農薬の使用量が減り、食物の価格が下がった。 否定1.挿入された遺伝子はさまざまな方法で変化し得るし、それが何世代も後に起こるかもしれない。自然に不当に干渉し、人類を危機にさらすのか。 肯定2.2050年までに世界の食糧生産を70%増やさなければ、世界人口の増加に追いつけない。人口が増え続ける世界に食糧を供給する唯一の手段である。 否定2.遺伝子組み換え植物を栽培しているのは世界の耕作地のわずか10%。しかも、アメリカ、カナダ、ブラジル、アルゼンチンの4ヶ国でその90%を占めている。栄養不良が広範に見られるケニアでさえ遺伝子組み換え食品を禁止しており、多くの国々が不安視していることは間違いない。 肯定3.自然交配は広い範囲で遺伝子が入れ替わる可能性があるが、ピンポイントに遺伝子を導入する組み換えは、奇想天外なものができる可能性が少ない。遺伝子組み換え作物で健康リスクが指摘された研究はないのだ。 否定3.遺伝子組み換え研究には種苗会社や関連企業から資金が出ており、いくら実験を重ねても組み換え作物のリスクが発見されるはずがない。 「男性の育児休暇取得の是非」「夫婦別姓の是非」「中高生の携帯電話校内持ち込みの是非」などに比べ、かなりヒートアップするテーマなのである。
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