660.理系なスポーツ(2014.3.10掲載)
冬季五輪で毎度注目を浴びるカーリングであるが、見た感じ自分でもできそうな競技だけに、けっこう酒席のネタになることが多い。 酔客A氏「時速130kmのアルペンスキーや3回転ひねりが当たり前のスノーボードと比べると、安全で楽な競技じゃないか。同じメダルでいいのか」 酔客B氏「カーリングが五輪の正式種目になったのは1998年でまだ日が浅い。頑張ればゲートボールも夏季五輪の種目になるのではないか」 酔客C氏「ストーンがかっこいい。部屋に飾りたい」 科学的にはおとぼけC氏の発言が最もクールであり、実際に岩石のコレクションとしてストーンを毎日磨いている地質学者を知っている。1個10万円前後だが16個セットでばら売り不可。どうやって入手したのかな。 オリンピックで使用されるストーンは、どれもアルサクレイグ島というスコットランド沖の小島で採れた石。他のストーンとぶつかる部分は一般的な緑色花崗岩だが、氷と接する面はブルーホーン花崗岩という貴重な素材なのだ。 水を吸わず欠けることもなく、100年間正確なカールを描くことが可能とされるアルサクレイグ島の花崗岩。貴重すぎて採石は20年に1度に制限されている。 この地質学者垂涎の花崗岩は、6000万年前のアルサクレイグ島のでき方に由来している。大量のマグマが地層を貫いて上昇し、急速に冷えて花崗岩になる際、非常に小さな結晶が形成された。その結晶がお互いに入り組み、結晶間の化学結合が自身を頑丈にしたのである。 そんな居酒屋談義に物理好きの酔客D氏が乱入。「ストーンの摩擦と運動量保存の法則」について語り始めた。 カーリングはけっこう理系なスポーツなのである。
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