669.パタパタ(2014.5.12掲載)
その瞬間は突然やってきた。 2013年11月10日。フィギアスケートNHK杯のエキシビションで、アイスダンス2位のイタリア代表の演技が始まった瞬間、「お〜っ、この曲」。 33年間、曲名が知りたくてずっと気になっていた高校運動会のフォークダンス曲が演技曲として使われたのだ。 それは、南アフリカの黒人女性歌手ミリアム・マケバの「パタパタ」。 1967年に米国でヒットし、国内では社団法人フォークダンス連盟の推薦盤としてシングル発売されたから運動会でよく使われていたらしい。 記憶の封印が解かれたすっきり感と昔日の郷愁をたっぷり浴びつつも、反アパルトヘイトを歌に込めたミリアム・マケバの思いなど微塵も感じず浮かれていたことをちょっとだけ恥じた。 フォークダンスはなかなか奥が深いな。 ネイティブアメリカンを意味する「オクラホマ」をタイトルに冠した名曲「オクラホマミキサー」。小林亜星先生がサントリーオールドのCMソング「夜が来る」を作曲する際にモチーフとした「ワシントン広場の夜は更けて」。 どちらも名曲だが、「ワシントン広場…」の方が社会主義国家風の暗さをEマイナーで表現していて味がある。そして、亜星先生はCマイナーを使って、ウィスキーが飲みたくなる切ないメロディーを完成させた。 「ダンダンディダン シュビダディン オデーエーオエーオー」 この暗さがたまらん。まさに昭和のCMソング。最近のCMは元気で明るくてさわやかすぎる曲ばかりじゃないか。 くしくも、宗教学者の山折哲夫先生が「茶の間からマイナーコードが消えていじめが増えた」と語っていた。マイナーコードの暗い曲を聴くことで弱者の気持ちがわかり、助け合う心が生まれるというのだ。明るい曲は強者の曲、弱いものを思いやる気持ちは生まれない。 ならば、中学校で必須となったダンスの授業では、明るいヒップポップではなく、暗いフォークダンスを踊ろうではないか。 「パタパタでいじめ撲滅!」 反アパルトヘイトに負けないムーブメントを期待してしまうのである。
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