672.感情を読む(2014.6.2掲載)
顔の表情や身振り、声の調子などから相手の感情を読む。 当然のことだが、他者の心理状態をうまく感知できなければ良好な人間関係は構築できず、「空気が読めない人」というレッテルを貼られてしまう。 身近な交友関係はもちろん、国家の安全保障さえも感情の察知力に左右される場合があり、米国では人の顔に表れる感情が読み取れるよう、警察官や警備関係者を毎年数百万ドルかけて訓練している。 時代を遡って大河ドラマ「軍師官兵衛」の演出でも、家臣たちが織田信長の表情を読みながら「親方さま」の思考回路にシンクロしようと苦労するシーンをよく見かける。 当たり前の意見を述べるイエスマンでは登用されないし、勇気を出して逆目を張って逆鱗に触れたのでは首が飛ぶ。その絶妙なバランス感覚で出世街道を爆走したのが豊臣秀吉だが、きっと親方さまの感情を読む力が長けていたに違いない。 ある年、安土城下で行われた大相撲興行で、結びの一番終了後の観客が出口に殺到して将棋倒しになり、けが人が多数発生した。家臣たちは、「道を広げてほしい」「警備員を増やしてほしい」などと、コストのかかる対策ばかりを陳情した。 当然、信長の表情が険しくなり、察知した秀吉は「金のかかることばかり申して親方さまを困らせるな」とフォロー。代案のなかった秀吉は信長から打擲されるが、「サルの言う通りじゃ」とその場がなごむ。 結局、信長のアイディアで結びの一番の後に別の興行を設けて帰る人の分散化を図り、コストをかけない安全運行に成功したのだ。この「別の興行」、弓取り式として現代の大相撲に継承されている。 「さすが親方さまじゃ〜」と歓喜する秀吉。 現代の会議でも似たような光景を見た気がするな。 警察官もFBIもサラリーマンも、デジタル時代だからこそ顔を突き合わせるコミュニケーション力が重要なのである。
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