679.仮説と検証(2014.7.21掲載)
あらゆる現象を「仮説−検証」サイクルに乗せて問題解決に導くのは、理系のしがない習性である。 現象「アフリカの奥地で下痢をしたゴリラが必ず食べる木の実がある」→仮説「その木の実には下痢防止成分が含まれている」→検証「木の実から特定の成分を抽出し、動物実験で下痢防止効果を確認」。 仮説が100%検証できれば新薬誕生等の問題解決につながるが、たいていの場合2割程度は想定外の結果になり、その2割に新たな実験のネタが潜んでいる。仮説が的中するもうれし、外れるもまたうれしという理系の悦びなのである。 先日、この仮説−検証サイクルの実践を、某国立大学付属幼稚園の教諭に切にお願いしてきた。どういう幼児教育をしたら難関大学に合格するのか、砂遊びは本当に人格形成につながるのか、幼時のガキ大将ほど大人になるとしょぼいという説は本当か、等々。 教育学部付属という実験校の責務として、氾濫する英才教育情報の真価を問う仮説−検証を実施してほしいのである。 ちなみに、東京大学付属中学は双子の生徒を素材にした研究に注力し、「短距離走の能力は遺伝するが、長距離走の能力は遺伝しない」「社会科の学力は遺伝するが、数学の力は遺伝しない」等の検証結果を発表している。 なるほど、コツコツ地道に取り組む学科は中学からでもレベルアップできるということか。 ならば、その「地道に努力する力」を身につけるにはどういう幼児教育が最適なのか、そして、途中で投げ出さない性格は積み木遊びで醸成できるのか等のテーマを付属幼稚園で研究してほしい。 「学問に王道なし」は百も承知だが、あやしい教材を駆逐する意味でも、ぜひ教育の現場で仮説−検証サイクルを回してほしいのである。
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