682.獲りすぎていた人(2014.8.18掲載)
今年の6月に公表された「レッドリスト」で、ニホンウナギが「絶滅危惧種」に指定された。パンダやトキと同じレベルである。同時に、クロマグロも「軽度懸念」に格付けされてしまった。 どちらも「獲れるだけ獲る」という日本漁業の成れの果て。もはや、日本では漁業そのものが限界にきており、世界銀行から「2030年にかけて漁業がマイナス成長となるのは日本だけ」との烙印を押されたのだ。 なぜ漁業大国がこんなことになってしまったのか。 それは獲りすぎたから。 1980年代、アメリカの漁業生産量は日本の2分の1以下であったが、その後「IQ」と呼ばれる漁獲量割り当て方式を導入して成長。2012年は日本の486万トンを上回る556万トンとなっている。 自由競争の国アメリカが「獲ったもん勝ち」をやめ、資源を管理することによって成長したという逆転の軌跡。日本も学ばねば。 資源管理は、IQを含む3つのステージから成り立っている。 まず、ABC(生物学的許容漁獲量)。日本におけるABCの設定は水産庁の外郭団体である水産総合研究センターが行っている。運営資金がひも付きのため、言いたいことが言えてないんじゃないかな。 次に、TAC(漁獲可能量)。本来、ABCをもとに決められるはずのTACであるが、日本では漁業者に配慮してABCを超えるTACが設定される例が目立つ。例えば、スケトウダラのABCは6500トンだが、TACは1万3000トンで全く無意味。 そして、IQ(個別割当)とITQ(譲渡性個別割当)。日本で本格的にIQを導入している漁業は皆無に近く、ITQは導入されていない。IQでは、自身の漁獲量が事前に決まっているため、魚価が高い時期を選んで漁をすることができるし、時化の時に危険を冒してまで漁に出る必要もなくなる。 なるほど、資源を知り、守り、適正な収益で漁業を発展させる。実に論理的で明快なストーリーである。 漁業を学んだ今宵は鰻の白焼きで一献。 もちろん家計の実態を把握し(ABC)、可能額を決め(TAC)、小生の割当(IQ)内で愉しむ所存である。
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