684.小保方さん(2014.9.1掲載)
元横綱朝青龍の全盛期に両国国技館を数回訪れたが、その度に感じたのが「朝青龍関の人気の高さは尋常じゃない」ということだった。 テレビ観戦ではわからないが、白鵬や高見盛とは歓声のボリュームが違うし、地響きのようなおっさんの太い声が混ざるのも特徴的。それは、東京ドームで清原和博選手が登場したときの声援と共通するものがあった。 そう、おっさんはダーティーヒーローが好きなんだ。 イチロー選手やカズ選手が上位を占める「好きなスポーツ選手ランキング」には登場しない、悪の匂いがする選手。お茶の間で素行の悪さを批判されても、入場料を払って観戦するファン層からは絶大な支持を得ている。 芸能人だって、勝新さんやショーケンさんのようなダーティーヒーローの人気は高い。泥水を飲み、不条理を乗り越えてきたおっさんは自身の中に闇を抱えるからこそ、ダークサイドに引き寄せられるのかもしれない。 そして、不条理といえば、日本人は悲劇のヒーローも大好き。いわゆる「判官びいき」である。 元祖はもちろん、平家打倒に貢献するも兄頼朝に冷遇された九郎判官義経。また、アホな大野治長のせいで能力を発揮できないまま大阪夏の陣に散った真田幸村は敵将からも尊敬された。近代では、不平士族を一手に引き受け、西南戦争で賊軍の汚名を自ら被って武家社会の幕を下ろした西郷隆盛。 そういや、浅田真央選手も悲劇性があるから全国民から愛されているんだな。 ダーティーヒーローと判官びいき。まさにこれは、日本社会が求める究極のタレント像ではないか。 この条件を満たす現代最高のタレントが、理研の小保方さんである。連日新聞のトップを飾り、ワイドショーで取り上げれば高視聴率を稼ぐ。ノーベル賞を取ったってメディア寿命はせいぜい2週間だし、何の罪も犯していない一般人がこれほど長期にわたって注目を集める事例は他にないんじゃないか。 ダーティーでありながら判官びいきのファン層も多い小保方さん。 もはや科学的な論争は二の次。メディアの寵児としてもっと評価しなければならないと思うのである。
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