697.時代劇考(2014.12.1掲載)
先日、広告代理店の営業マンとCMの打ち合わせをした際、時代劇に関する日ごろの不満をぶちまけてやった。 「年齢とともに時代劇志向が高まってきたのに、テレビでやっている時代劇はNHKの大河ドラマくらい。この先、どうすればいいんだ」と。 テレビ時代劇の衰退にはいくつかの理由がある。製作費がかかりすぎる(大河ドラマ1本6000万円、民放現代劇2500万円)、民放の場合スポンサーがつきにくい(劇中に現代人の物欲を刺激する商品など出せない)、ロケ地が限られる(水戸黄門に電線が映り込んでいたという都市伝説あり)等々。 そんな中、多くの問題点を突破した痛快傑作時代劇の続編が決定した。2015年2月スタートのBSプレミアム「雲霧仁左衛門2」である。 2013年に放送された前作も最高に良かった。池波正太郎原作だけにストリーはしっかりしていて、「裏鬼平犯科帳」という二つ名の通り、主役の悪役ぶりがキレていた。大盗賊の親分である雲霧仁左衛門を演じるのが中井貴一、対する火付盗賊改方のトップ安部式部役には國村隼。二人のリーダー対決がものすごくカッコいい。 そして、湯水の製作費を持つNHKだけに、細部のこだわりがすごい。バランス良くこだわるから居間にいながら江戸時代にトリップできるのだ。 そう、バランスが大事。 例えば夜の長屋のシーン。当時の行燈の明るさは、やっと字が読める豆電球程度。ここをリアルに追求して、放送可能な限界まで照明を落とす。ただ、こだわりすぎて行燈の油である魚油から煙が出るシーンを入れたのでは画面上具合が悪い。価格が2倍の菜種油を使用していたのは遊郭くらいだが、ここは菜種で行こう。 そして行燈の下には急須のような油差。油がなくなればこれでつぎ足し、空になれば油売りの行商人から量り売りしてもらう。油売りは、量った最後の一滴まで油を油差に入れなければならず、油のしずくが切れるまでにはかなりの時間を要した。その間を世間話でつないでいたのだが傍目には無駄話でさぼっているようにも見え、「油を売る」の語源となった。 ふむふむ、江戸旅行満喫だな。 気がつけば広告マン相手に油を売っていた初冬の昼下がりなのであった。
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