698.進化の途中(2014.12.8掲載)
ウィスコンシン大学のホークス博士は論文の中で、「人類ほど自身の運命を変えてきた生物はない」と述べている。 大自然の脅威や猛獣から身を守るすべを学び、命にかかわる多くの病気を根治し、狭い畑を工業型農業の広大な農地に変えた。つまり、人類は自然に逆らい、自然をコントロールする力によって自然選択を免れたというのだ。 だから、「適者生存」などもはや存在せず、人類の進化は事実上終わったと主張する人が多い。 いやいやそんなことはない。やわらかいものばかり食べて育った最近のイケメンはあごが小さく小顔ではないか。背も高いし脚も長い。進化に取り残されたおっさんのひがみかもしれないが、進化は終わってなんかいない。 最近の人類進化の実例として最もよく研究されてきたのが「乳糖耐性」。人類はみな乳糖を分解するラクターゼという酵素を持って生まれてくるため、乳からエネルギーを容易に得ることができる。これは乳児が生きるための必須能力だが、ほとんどの人が成人になるまでにこの能力を失ってしまう。 ところが酪農が始まり、成人が乳を飲み始めた7000年前頃からラクターゼが消失しない遺伝子変異が生じるようになった。結果、現時点で70%前後の成人が乳糖を分解できるように「進化」したのだ(日本人に限ると20%くらい)。 夜ごと風呂上がりに牛乳500mlを一気飲みする小生、間違いなく乳糖を分解できる「進化組」だと思う。 そしてもう1つが足の小指の関節。 まず手の指を見る。付け根の関節を1つと数えると親指の関節は2つで、それ以外は3つ。ならば足の指も同じかと思いきや、約9割の日本人は弥生時代頃から足の小指の関節が2つに進化(退化)しているらしい。 牛乳を飲みほした後、自身の足の小指を見た。見事に関節が3つあり「縄文人かっ」とひとり突っ込みを入れた。 心身ともに、まだまだ進化の途中なのである。
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