703.アメリカ料理(2015.1.19掲載)
秋葉原にある東京出張時の定宿は、宿泊客の約4割が外国人。エレベーターで乗り合わせたアメリカ人を見上げ、「なに食べたらこんなにデカくなるんだ」と毎度ひとりごちる。 そこで、今後の日米友好の第一歩として、アメリカ食文化の歴史を学ぶことにした。 1620年の暮れ、イギリス清教徒の一団「ピルグリム・ファーザーズ」がメイフラワー号に乗ってマサチューセッツ州ニューイングランドに上陸したことは、中学校でなんとなく習った気がする。 この時、9週間の船旅で疲れ果てた一行は極寒の北米で食糧を調達するすべを知らず、春を迎えるまでに病気と飢餓で半数が死んでしまった。見かねた先住民のアメリカ・インディアンが魚、獣の狩猟法やとうもろこし、かぼちゃの栽培法を伝授したところ、豊かな土地のおかげでイギリス時代の5倍の収穫を得たのだった。 翌年、豊富な収穫に感謝する宴に世話になったインディアンを招待して三日三晩の大宴会を敢行。これが感謝祭の起源であり、現在は11月の第4木曜日。日本の勤労感謝の日である11月23日と近いが、こちらは宮中祭祀の「新嘗祭」に起源をもつ祝日であり、関係はない。 そして、メイフラワー号の入植から1世紀を経た独立戦争(1775年)の頃には、本国のイギリス人より身長が10センチも高くなったというから、アメリカ大陸の豊かさはすごいんだな。 牛肉の需要が高まったのはさらに1世紀後の南北戦争以降。ご存知カウボーイが消費地まで牛を運び、牛肉文化の立役者となったのだ(20年間で4万人のカウボーイが550万頭の牛を運んだ)。 なるほど、豊かな土地、アメリカ・インディアンの知恵、カウボーイ。このあたりがアメリカ食のキーワードかな。ならば、ハンバーガーは? 実は、ハンバーガーはドイツからの移民がアメリカに持ち込んだもので、1904年のセントルイス万博で大好評を博して以来、アメリカの国民食となった。現在、3億1千万人のアメリカ人のうち、4千万人以上がドイツ系というから納得。 その巨躯から連想するハイカロリーな肉食とは裏腹に、アメリカ食文化の歴史は先住民と移民の質素な食習慣によって形成されていたのだ。 無性にハンバーガーが食べたくなった初春なのである。
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