708.外食エレジー(2015.2.23掲載)
昨年末、親戚が経営していた回転寿司の店が閉店となった。 幹線道路沿いのスーパーに隣接する好立地で全盛期は3時間待ちの大盛況だったが、そこは単独店のはかなさ。近隣にチェーン店の出店が相次ぎ、価格競争に巻き込まれてしまったのだ。 昨年の秋頃、「100円にはない美味しさ!」という起死回生のキャッチコピーで新聞折り込み広告を打ったのが最後のあだ花となった。 とにかく、回転寿司は原価との戦いである。チェーン店だと1皿100円のにぎりの原材料費が45円前後。これに20円の人件費が乗って65円で粗利益が35円。家賃を考えると利益率は低いが、店舗の規模を大きくして集客数で帳尻を合わす。 親戚の店はどうだったかというと、原材料費はなんとか50円に抑えたものの人件費が30円でとても100円では出せない状態だった。原材料費(M)+人件費(L)を60%以下に抑えるという外食の掟、「ML60」を大きく超えてしまったのだ。 この、ML60と家賃と集客のバランスがうまく取れた外食店のみが生き残るわけだが、多くのコンサルが「駅周辺の立ち食い店が一番もうかる」と口をそろえる。 家賃は高いが、朝食から夜食までの全時間帯で客が途切れず、サラリーマン、学生、飲食業界人というすべての顧客がそこそこ納得する無難な味。自動券売機で人件費を抑えつつ、こだわりも適度に控えて原材料費を下げるのだ。 駅前繁盛店の代表格である日高屋の神田社長も「日高屋は屋台の再現」と考え、駅前にこだわって現在350店舗。1日の乗降客が2万5000人程度の駅前なら成功率が高く、首都圏では約600ヶ所がそれに該当するらしい。まだまだ伸びしろはあるな。 で、件の親戚に日高屋の成功事例を伝えたところ、来月から一念発起でラーメン店に修行に出るという。目指せ駅前立地とのことだが、我が愛媛県に乗降客が2万5000人を超える駅はない。 外食ビジネスは本当に難しいのである。
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