710.冬眠療法(2015.3.9掲載)
3月6日は「啓蟄」だった。虫が這い出る陽気に、冬眠から覚める動物もいたに違いない。 冬眠は「簡単な問題に対処するための複雑な解決策」といわれており、冬の食糧難を乗り切るためのクマやリスの複雑な生理機能が、人間の健康に役立つのではないかと注目を集めている。 ハイイログマから糖尿病治療を学ぶ。 太りすぎの人はインスリンに反応せず、血糖値が上昇して糖尿病になる。しかし、ハイイログマは秋に体重が45kg以上も増えるのに糖尿病知らず。どうやら冬が近づくと脂肪細胞のインスリン感受性が高まり、糖を処理して保存できるようになるらしい。これをヒントに、糖尿病患者のインスリン感度を高める研究が進行中。 ホッキョクジリスから脳卒中治療を学ぶ。 冬眠中のホッキョクジリスの脳内血流は通常の10分の1と酸欠状態だが、決して脳卒中にはならない。それは代謝を夏場の50分の1に低下させ、必要な酸素量を減らしているから。ならば脳卒中で倒れた患者の体を冷やし、代謝を下げれば脳損傷を防げるかもしれない。 アメリカクロクマから骨粗鬆症治療を学ぶ。 人間が長期間食事をせずに寝ていると、骨が徐々に劣化していく。しかし、アメリカクロクマの骨は冬眠明けでも丈夫。これは、冬眠中に骨の再構成のスピードを4分の1に下げるホルモンが働くから。このホルモンを突き止めれば、骨粗鬆症患者の骨密度を保護する薬ができるのではないか。 う〜ん、すごい。一見怠けているような冬眠だが、医学的には高レベルの代謝制御が行われているのだ。 実を言うと、小生ちょっとだけ冬眠療法を実践している。夜、できるだけ寒い状態で睡眠をとることで体温が低下して冬眠状態になり、代謝も低下。すなわち、加齢にストップがかかるというやや危険な低体温睡眠法。 成果は不明だが、初日あまりに寒く、極寒の地でクマに襲われる夢を見た。あれは「無理するな」というハイイログマからの警告だったのか。 自然界から学ぶことはまだまだたくさんあるのである。
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