711.殺人椅子(2015.3.16掲載)
物騒なタイトルだが、拷問の話でも処刑の話でもない。「座る」という行為に潜む生活習慣病のリスクに警鐘を鳴らすべく、極端な表現にしたのだ。 畳生活から椅子生活に変わった日本。正座しないから足が細くて長くなったと喜んでばかりはいられない。 米国人は平均で1日13時間を座って過ごしているが、これは致命的らしい。8800人の成人を7年間追跡調査した結果によると、テレビを見ながら1日に4時間以上座って過ごした人は、2時間未満の人に比べて死亡率が46%も高かった。 また、1日の半分以上を座って過ごすと糖尿病と心血管疾患のリスクが2倍になるという別の研究もある。むむ、座ることがそんなにまずいのか。 自身の生活を振り返ってみる。朝食、通勤、デスクワーク、会議、接客、帰宅して夕食、テレビにネット。確かに半日は座っているぞ。 さらに研究は続く。 食後に座っていると血糖値が急激に上がるが、立った状態なら血糖値の上昇はその半分。そこで、23kgも体重過多で、糖尿病を患う44歳の男性が職場での打ち合わせを全て歩きながら実施したところ、食事制限なしでも1年で11kg、2年目で4.5kgの減量に成功したのだ。 また、同じような食事をとり、仕事も似ている細身と肥満の男性を比較すると、肥満者は椅子に座っている時間が1日当たり2.25時間長く、消費カロリーが1日350kcal少なかった。 やっとわかった。食事を減らしても体重が減らない理由が。要するに座り過ぎの運動不足で消費カロリーが少なかったのだ。そこで対策。 前述の減量男性を見習って、打ち合わせは廊下を歩きながら行う。書類を広げられない分、事前にデータを頭に入れるから結果も早い。当然電話も携帯電話だから歩きながら通話(どちらも情報漏洩に注意)。 さらに、「デスク付きトレッドミル歩行器」なる利器を見つけてしまった。フィットネスクラブでよく見かける歩行器に立ち机とパソコンがセットされていて、歩きながらデスクワークをするというもの。 う〜ん、買う人いるのかな。意図はよくわかるが、なんだか人類の未来が心配になってくる機械なのである。
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