714.野球漫画クロニクル(2015.4.6掲載)
今年の選抜高校野球は21世紀枠で地元の進学校である松山東高校が出場し、各界で活躍するOB総出の大騒動となった。 さすが旧制一中、話題も豊富で「偏差値70の高校球児」「夏目漱石が教鞭をとっていた」等々、とにかく伝統の力とOBの情熱には恐れ入った。 甲子園で校歌を歌えるなんて本当にうらやましいが、我が母校にそれを期待するのは少々酷か。やる気も根性もないし、校舎改築時のプレハブ仮設校舎を内野グラウンドの上におっ建ててしまうような校風なのだから。 そこで本稿では、歴史に残る野球漫画を振り返り、軟弱母校甲子園出場の祈願としたい。 1966年、「巨人の星」連載開始(週刊少年サンデー)。 これほどまでに野球界に影響を与えた漫画はないだろう。主人公星飛雄馬の成長譚でもある本作ゆえ、「飛雄馬」という名前は、ヒューマン(human)に由来するらしい。冒頭の松山東高校野球部に所属する友人の息子は、名前が「飛雄」。やられた。 1972年、「ドカベン」連載開始(週刊少年チャンピオン)。 野球関係者が選ぶ漫画登場人物の「ベストナイン」で、山田太郎は必ずクリーンナップに名を連ねる。浪商高校時代、1979年の選抜甲子園で準優勝したドカベン香川伸之氏のプロ初打席初ホームランは、日生球場の場外に消えた。 1981年、「タッチ」連載開始(週刊少年サンデー)。 巨人の星から15年、こんなにさわやかな野球漫画が登場するとは。「ちゃぶ台返し」「大リーグ養成ギプス」「うさぎ跳び」「父ちゃんは日本一の日雇い人夫だ」…。タッチはこれらのワードの対極にあった。経済は発展し、栄養が充足し、高校野球と高校球児がカッコ良くなった。1980年の夏の甲子園で準優勝した早稲田実業の荒木大輔投手もカッコ良かった。 こうして振り返ると、自身の成長とぴったり重なる野球漫画史であるが、その後も名作は続出する。1984年の「緑山高校」、1992年の「H2」、1994年の「MAJOR」、1998年の「ROOKIES」。 ただ、何となく物足りない。熱さがない。 ならば熱いOBの後押しで、秀才が甲子園を目指す「県立松山東高校野球部」てな野球漫画を企画してみてはどうかと思うのである。
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