733.社会人概論(2015.8.24掲載)
今年も某国立大学で、2回生を対象とした「農林水産ビジネス最前線」という講義を持たせてもらった。 講義をする上で肝に銘じていることは3つ。「どんな実学でも学問として成立させる」「社会の現実を伝える」「学生を眠らせない」。 大学側からは実体験を基にしたキャリア教育をリクエストされるが、30年間泥水を飲みながら会得したツボを自慢げに話しても伝わるわけがない。自身で咀嚼し、さまざまな事象を論理的かつ体系的にまとめてこその学問なのだ。 具体例…「バイトは作業、仕事は価値創造」。低カロリーマヨネーズは、油の中に水を閉じ込める技術を開発することでカロリー65%カットを実現。油の代わりに水を閉じ込めるから原材料費が安く上がるが、付加価値が付いて売価は高い。だからもうかる。これが価値創造。これが仕事。 とはいうものの、きれいごとでは通用しない社会の現実を伝えることも重要。この対策として、職業別の平均年収や企業規模別の平均年収を提示することにしている。ここで多くの学生がへこむ。 具体例…上場企業を売上順に並べると、平均年収も同じ順に並ぶ。食品メーカーだと、売上1位は2兆1862億円で年収986万円、10位は5669億円で772万円、50位になると1254億円で年収599万円。 そして、大講堂の学生を眠らせないため、5分に1回小ネタを繰り出すようにしている。試食、試飲、ビデオ上映、ギャグ、下ネタ等々。NHK「おかあさんといっしょ」は、幼児の集中力を切らさないため3分に1回コーナーを切り替えるらしいが、大学生だから5分に1回。90分講義だと18個のネタが必要となる。 具体例…カニカマ、醤油、カップ麺を試食させ、共通点を答えさせる。正解は「米国で完全に浸透している日本の加工食品」。なで肩といかり肩のペットボトルを触ってもらい、用途の違いを答えさせる。正解は「なで肩は炭酸飲料、いかり肩はお茶や水」。 最後に、繁盛店調査の最中、オカマに迫られ抱きつかれた体験談を赤面しながら話す。 ここで学生の目が覚める。 ある程度の切り売りは覚悟の上なのである。
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