737.ハイテク包帯(2015.9.21掲載)
サッカーに明け暮れた高校時代、ガチガチの土グラウンドでゴールキーパーをやってたものだから、すり傷は日常茶飯事だった。 練習後に水道水で土を洗い流し、オキシドール(過酸化水素水)で殺菌してガーゼを当てるという、今では全否定されている手法で当たり前のように手当てをしていた。 オキシドールを使うと細菌と一緒に表面細胞も死滅してしまい、傷口がより傷んでしまう。またガーゼは傷を治す体液を吸い取って乾燥させるから、治りも遅くなる。 要するに、傷口をウエットにした方が早く治るわけで、そのためにラップで傷口を覆う「閉鎖療法」とか「湿潤療法」と呼ばれる民間療法が浸透してきた。もちろん、湿疹ができやすいというラップの欠点には注意しなければならないが。 それにしても、これほどまでに真逆の治療が正統派になるとは、うさぎ飛びの廃止と同じくらいの驚きである。治癒の目安だったかさぶたが、傷跡を残す悪のしるしとされてしまうなんて。 さらに2015年、最先端の傷治療法が臨床試験を迎えようとしている。ハーバード大学のエバンズ博士は、傷口治療で皮膚移植をした際、血管が移植組織に十分な酸素を届けていないことで治癒が遅れることを発見した。 そこで、酸素濃度を色で表示する包帯を作ったのだ。酸素が豊富だと包帯は緑に見えるが、酸素が欠乏している部分は黄色からオレンジ、さらには赤く光って警告するというすぐれもの。 看護師が包帯の赤い警告を見たら医師に連絡し、問題部位の血流や酸素濃度を改善する処置を施す。これはすごい。ウルトラマンのカラータイマーのごときハイテク包帯。 頭に巻いたら、脳の酸欠状態も表示してくれるのかな。ついでに心の酸欠なんかもモニターできて、赤い警告を見た人がやさしくケアしてくれる…。 いろいろ妄想してしまうハイテク包帯の出現なのである。
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