741.デパ地下考(2015.10.19掲載)
今から30年前の小僧時代、週に3回くらい看板車でスーパーやデパートに商品を届ける仕事を担当していた。 スーパーの多くは郊外に店舗があるから駐車場や納品場所が広くて作業は楽だったが、面倒なのはデパート。繁華街の路地裏に看板車を乗り入れ、狭い納品口から台車泣かせの裏階段で地下にもぐり込む。 老舗店ほど裏スペースは暗くて狭い。文化財的建造物だから仕方がないのかもしれないが、華やかな売り場とは真逆の暗部を体感できたのはいい経験だった。納品後に利用した社員食堂で見た女子社員の生態も、かなり勉強になったが…。 そんなデパートの実態をもう一度学びたくなり、先日、デパ地下一筋30年という大手デパートカリスマ専務の講演を拝聴した。 まずはデパート3ヶ条。デパートは、「楽しくなければならない」「文化業態でなければならない」「学びの場でなければならない」。 そっか、デパ地下は楽しく文化的な勉強ができる公器でもあるんだな。利き酒勉強会とか世界の板チョコ博物館とか。ならば健康情報発信も満載かと思いきや、低カロリーとかダイエット等をアピールすると、他人の目を気にして誰も集まらないのだとか。消費者心理は複雑。 そして、スーパーとの最大の違いは、和菓子と洋菓子で全体の50%を占めるという点。デパ地下惣菜や高級弁当にも華はあるが、和菓子、洋菓子の強みは自家消費に加えてギフト需要があるということ。そりゃ、行列店のお菓子をもらうとうれしいに決まっている。 この、和菓子と洋菓子でしっかり稼いで、ほとんど利益の出ない文化業態や学びの場に投資するのだという。だから、利き酒イベントなんかは超お得。 全体の売り場イメージでいうと、儲ける売り場60%、楽しい売り場30%、情報発信の売り場10%という比率。もちろん、都心の店舗と地方店では状況が異なるし、ターミナル駅と直結しているかどうかも重要な環境因子となる。 30年前の納品トラウマを拭うように耳を傾けた講演だったが、売り場づくりのイメージが妙に腑に落ちた。うん、これも何かの啓示に違いない。 これからは儲ける仕事60%、楽しい仕事30%、情報発信の仕事10%でいこう、と思った次第なのである。
\\\\
|
column menu
|