742.名医探訪(2015.10.26掲載)
食品業界に身を置く以上、美味しい飲食店の開拓は必須業務であり、失敗を恐れずとにかく飛び込み食べまくる日々である。 新規開拓を続けていると、店の外観を見ただけで味の良否が推定できるようになるんじゃないかと期待したのだが、そう甘くはなかった。 ひっそりと路地裏にたたずむ清楚な小料理屋。カウンター向こうには清潔感あふれる板さんと美人のおかみさん。こんな完璧なシチュエーションながら、残念な味ということがたびたびあった。 そうかと思えば、ガード下の小汚い店の前で植木鉢に水をやる台湾人女性と目が合い、絶対あぶないと思いながらテレサテンが流れる店内にいざなわれ、やっぱり出ようと思いながら口にした日本料理が激ウマだったりもした。 名店探しは本当に難しい。 そんな名店探訪を東京で続けていたある日の明け方、突然38.5℃の発熱で目が回り始めた。東京滞在10日間の中日であり、なんとしても即治さねばと人生初の病院新規開拓に挑戦した。 まず、自分なりに名病院の3条件を定義してみた。 院長が国立大学出身であること…入試の低ハードルを棚に上げつつ国家試験の合格率向上に命をかける私大医学部は、実習がおろそかになり腕が不安。 院長が60歳以上であること…若手は病気を見て人を見ない。いや、病気も見ずに電子カルテの画面ばかり見ている。達観した初老のドクターこそが真の医療の体現者ではないか。 駅近くのビルに間借りする小さな町病院であること…大病院は待ち時間が長い上に不要な検査を強いられる。さらに駅近くの立地なら、時間に追われて休めないビジネス患者のツボを理解してくれるはず。 ネット検索の結果、これらの条件を満たす病院が最寄り駅近くにあり訪問。 「先生、注射お願いします」 「おまいさんねェ、注射なんてェのは昭和で終わッちまったんだよ。副作用で万にひとりくれェ死んじまうんだ。それでもやるかい?」 こんな感じで江戸弁を話す70歳くらいの赤ひげ先生。ちょっと怖かったが投薬だけで昼頃には完全に快復した。つまり、たまたまかもしれないが名病院の仮説が当たったのだ。で、夕刻より名店探訪再開。 美味しいお店を見抜く3ヶ条が見つかるまで、探訪を続ける所存である。
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