752.赤の力(2016.1.11掲載)
先日、85歳になる伯父から「どんな野菜を食べれば体にいいのかひとことで言ってくれ」と無茶な質問を受け、とりあえず「色の濃い野菜」と答えておいた。 トマト、ニンジン、かぼちゃ、ピーマン、唐辛子…。まぁ、色の濃い野菜で間違いないだろう。さらに絞れば、「赤い野菜」でもよかったかな。 そもそも植物としての「赤」は、捕食者に種子を拡散してもらうためのシグナルであり、「おいしくて栄養満点ですよ」というメッセージなのだから。 赤の力はすごい。「アカ」は共産主義者の代名詞であり、中国では幸運の色として花嫁衣装の定番となっている。もちろん血の色は赤で信号機も目立つから止まれが赤。闘牛士が牛を徴発させるのが赤い布なら、童話で村人に溶け込もうとしたのも赤鬼だった。 赤の力を調査した研究がいくつかある。 フランス南ブルターニュ大学の研究グループは、女性研究者に赤、ピンク、茶色、無色の口紅をつけてバーに1人で座らせ、おとりナンパ実験を敢行したのだ。結果、赤の口紅をつけた場合に最も早く男性が声を掛けてきたらしい。なんともフランスらしい実験だが、これは赤の力というより、派手か地味かという違いではないか。 英国ダラム大学の研究グループは、2004年のアテネ五輪における4種の格闘技で、ウエアの色と勝敗の関係を調査した。競技はボクシング、テコンドー、レスリングのグレコローマンスタイルとフリースタイルの4種。 結果、4種目すべてで赤を着用していた選手の方が青の選手より勝ち数が多かった。この傾向は、実力伯仲の試合において顕著だった。理由は、審判が赤の選手を好んだ、赤の選手が自信を持った、赤色で相手が怯んだなどが考えられるが、同研究チームは国際サッカートーナメントでも同様の結果を見出しており、スポーツウェアは赤がいいという仮説が成り立ちそうな気配である。 ただし、紅白戦が定番の日本では赤が強いとは言い切れない。源平合戦でも白旗の源氏が勝利したし、大晦日の紅白歌合戦も通算すれば白組36勝、紅組30勝。運動会の騎馬戦も紅組が弱かった気がするなぁ。 まぁ、赤一色の国旗を冠する国ならともかく、日の丸は赤の面積が約19%。日本は白の力も強いのである。
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