754.納豆にんにく子持ち昆布(2016.1.25掲載)
食品企業における基礎研究の要諦は、自然現象を解明して得た理論を生産技術として再構築し、オンリーワンの新商品を生み出すことである。 これがなかなかできない。自然現象を解明するところまでは大学で修めた専門知識でなんとかなるが、商品につなげるとなると教科書のない未知の領域でハードルの高さは計り知れない。 そんなハードルを乗り越えた事例をいくつか紹介する。 納豆のネバネバ成分… 納豆のネバネバ成分を解明するべく基礎研究を開始したA社は、それがグルタミン酸が数多くつながったポリグルタミン酸であることを発見。ただ、納豆からこの成分を取り出すと納豆臭くて使えない。 そこで、サトウキビを培地にして納豆菌に大量生産させ、純粋なポリグルタミン酸が完成した。これを様々な食品に配合すると、分子レベルで舌の上で呈味成分が絡みつき、薄味でもしっかり味を感じる。 にんにくのコク味成分… 料理ににんにくを使用するとコクが増す。そこで、にんにくのコク味成分だけを取りだすことができれば、あらゆる料理のコクが増すと考えたA社は、それがアミノ酸が3つ繋がったグルタチオンであることを発見。ただ、にんにくから取り出したグルタチオンはにんにく臭くて使えない。 そこで、酵母に大量生産させ、純粋なグルタチオンを含む酵母エキスが完成した。これを様々な料理に配合すると、にんにくを使用したかのようなコク味が生まれる。 子持ち昆布の接着剤… 昆布と魚卵がくっつくためには特殊な接着剤が介在しているに違いないと考えたA社は、その接着剤がタンパク質どうしに橋をかけてつなぐトランスグルタミナーゼという酵素であることを発見。 そこで、放線菌に大量生産させて純粋なトランスグルタミナーゼを入手。魚卵以外でも肉片をくっつけてブロックにしたり、かまぼこに練りこんで弾力を増したりと商品化は大成功。 基礎研究は1を分解して0にする学問、そして商品開発はその0から1を組み立てる事業。 学問が事業につながるストーリーは美しく、結果、オンリーワンで稼げる商品が生まれるのだ。
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