755.なぜ野菜は体にいいのか(2016.2.1掲載)
幼い頃、「頭がよくなるから玉ねぎを食べなさい」と母によく言われた。玉ねぎの辛味が脳を刺激するのだと。全く信用していなかったこの説、あながちハズレでもなさそうな気配である。 これまでの学説では、野菜が体にいいのは抗酸化性物質のおかげだということになっていた。フリーラジカルによって細胞が傷つくことを、抗酸化性物質が抑制するという考え方だ。 ところが、動物や人での実験を厳密に評価すると、ビタミンA、C、Eなどの抗酸化性物質は、病気を防いだり進行を抑えたりすることはできないことがわかってきた。 ではなぜ野菜は体にいいのか。 米国立老化研究所のグループは、植物が害虫から身を守るために作り出す苦味や辛味のある毒性化合物が、人の細胞に軽いストレスをかけて細胞を元気にしていることを報告した。 微量の毒素が運動や断食と同様のストレスを細胞にかけ、そのストレスに対抗することでより大きなストレスに耐える能力が強化されるというのだ。この現象は「ホルミシス」と呼ばれている。 例えば、海藻に含まれるカイニン酸という神経毒は微量だと脳細胞を活性化させ、ブラジルナッツに含まれ食べ過ぎると肝臓や肺の障害を引き起こすセレンは、心臓病やがんを防ぐ酵素の栄養源となる。 また、香辛料のクルクミン、ニンニク、トウガラシや、ブロッコリーに含まれるスルフォラファン、黒クルミに含まれるプルンバギンなんかも微量だと細胞を活性化する。 毒は薬という定説が、野菜の健康機能にも当てはまりつつあるのだ。 思えば、都会のサリーマンが元気なのは、深酒、通勤、人混みというストレスを毎日少しずつ浴びることで、細胞が強くなっているからかもしれない。 そして、居酒屋でつまむ玉ねぎの辛味が脳細胞を活性化していると信じつつ、今夜も深酒の予感なのである。
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