756.睡眠の常識(2016.2.8掲載)
今から40年前のまじめに勉強していた中学坊主の頃、睡眠で記憶が定着するという自覚症状があり、それをよく利用していた。 就寝前に歴史の年代暗記なんかに取り組み、うっすら覚えた状態で寝ると翌朝完璧な状態で暗記しているのだ。このことを担任の理科教師に話したところ、「おもしろいが、そういう学説は無い」とのつれない返事。補足として睡眠研究の第一人者、レヒトシャッフェン博士の言葉を教えてくれた。 「もし睡眠に生命の維持に関わる機能がまったくないというなら、睡眠は進化のプロセスが犯した最大のミスだ」 当時はそれくらい睡眠の謎が解明しておらず、「睡眠の機能で唯一知られているものといえば眠気の解消だ」という皮肉を語る研究者がいたくらいだ。 そんな睡眠研究がこの20年で急速に進み、目的の一部が解明されつつある。それは、免疫強化、ホルモンバランス、精神の健康、脳からの有害物質除去、そして学習と記憶!その研究成果を紹介する。 免疫強化…A型肝炎ワクチンを接種した夜にしっかり寝たグループは、徹夜したグループより抗体濃度が97%も高かった。つまり免疫力強化。 ホルモンバランス…4時間睡眠を2晩続けたグループは、食欲増進ホルモンが28%増え、食欲減退ホルモンが18%減少した。よって、不眠は肥満。睡眠が6時間未満だと肥満の可能性が50%増すことも報告されている。 精神の健康…徹夜明けに様々な単語を見せた後、通常睡眠を取り記憶力テストを実施すると、「悲嘆」「恐怖」などの否定的な単語を「平穏」「安心」などの肯定的な単語の2倍強く記憶していた。徹夜しないグループにこの差は出ない。つまり、寝ないと嫌な出来事ばかり記憶してうつ状態の要因になるということ。 有害物質除去…アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドが、睡眠中に脳から除去されることがラットの実験で証明された。 学習と記憶…被験者に、睡眠後の翌日に試験する課題を学習してもらう。その際、試験に出る課題と出ない課題を明確に提示したところ、当然、試験に出ると伝えていた課題のみ成績が向上した。ところが、午前中学習、午後試験というパターンだと、2つの課題の成績に差がなかった。つまり、覚醒ではなく睡眠が記憶を強化するのだ。やっぱり。 物忘れがひどくなってきた小生、その日出会った人の名前と顔を就寝前に復習する取り組みを始めた今日この頃なのである。
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