767.大学院進学のススメ(2016.4.25掲載)
某大学から、とんでもない講義の依頼を受けてしまった。標題に掲げた「大学院進学のススメ」である。 最近の大学院進学率の低さを憂いた農学部が企画した講義で、「どうしても大学院に行きたくなる内容にしてほしい」とのこと。私がやるなんてとんでもない。学位は持っているけど、私、大学院行ってないんですよ。 そこを何とかと押し切られ、生来の安請け合い精神でOKしてしまった。まいっか。 90分講義のツボは、「就活6ヶ条が備わってない人は大学院へ行くべし」ということにした。就活6ヶ条とは、「地頭がいい」「要領がいい」「継続力がある」「体力がある」「ストレスに強い」「人に嫌われない、嫌わない」。ただ、これらがすべて備わっている人なんて、自身を含めてベテラン社員でも見たことない。 そして、研究者を目指すなら、次のような「小学生の夏休みの理科研究」がひらめくかどうかがポイントだとたたみかける。3件とも実際に優秀賞を受賞した小学3年生の研究作品である。 「変身したコマの色」 2つの色を混ぜると何色になるか、絵の具を混ぜなくてもわかる画期的な装置を開発した。コマの円盤面を半分に分け、2色に塗り分ける。コマを回して円盤面を上から見ると、混ざった色が確認できるという仕組み。すごい発想力。仮に親が考えた実験だとしても、その親に敬意を表したい。 「サインペンのひみつを見つけたよ」 一見、単一の色に見える赤や青のサインペンだが、実際はさまざまな色が混ざって一つの色を形成している。コーヒーフィルターの端にサインペンで直径5ミリ前後の丸印を塗り、水や焼酎に浸して展開すれば含まれる色素がバラバラになって見えてくるのだ。これ、ペーパークロマトグラフィーという実験手法。小学生が知っているかな。 「3年間のおてんき」 単純な朝顔の観察日記も、こつこつデータを取り続けて気象データとリンクさせると壮大な作品になる。しかも3年間。ひらめきが乏しくたって、地道な積み重ねで名を成すこともあるんだ。 以上3題。すべて地頭と要領と継続性の賜物に違いない。 やはり自分も大学院には行くべきだった。 と学生に伝える予定である。
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