769.フランケンシュタインの誘惑(2016.5.9掲載)
待ちに待った番組がレギュラー化された。NHKBSプレミアム毎月最終木曜日午後9時スタートの「フランケンシュタインの誘惑」である。 ナビゲーターの吉川晃司もかっこいいが、番宣コピーのダーク感もいい。 「科学は、人間に夢を見せる一方で、ときに残酷な結果をつきつける。理想の人間を作ろうとした科学者フランケンシュタインが、怪物を生み出してしまったように…」 要するに、人類の発展のために消されてしまった「科学の闇」にスポットを当てる番組で、昨年放送された数回の特番が好評で見事昇格となったのだ。過去の番組内容を紹介する。 1912年、神の手を持つ天才外科医アレクシス・カレルは、臓器移植の功績が認められノーベル賞を受賞。その際、業績は「不死の細胞」のおかげだと主張し、細胞は永遠に生き続けられることが医学界の常識となった。この学説は、1961年にヘイフリックが完全否定するまで「不老長寿の欲望」によって支持され続けた。 1903年、伝記によく登場するキュリー夫人は、放射線を発する元素ラジウムを執念で鉱石の中から見つけ、夫とともにノーベル賞を受賞した。彼女はラジウムが細胞を破壊することに気づいていたが、「がん細胞を殺せる」とポジティブに考え研究を続けた。結果、多くの研究者や作業員が被爆し、彼女自身も放射性被爆による再生不良性貧血で1934年に亡くなった。 そして、レギュラー1回目のテーマは「ヒーラ細胞」。大学の研究室でよく使用するヒト細胞ヒーラ。これは、1951年にがんで亡くなった「ヘンリエッタ・ラックス」という黒人女性のがん細胞を無許可で培養し続けたもので、死後60年にわたって世界中で生き続けているという倫理委員会が卒倒する話。 コンプライアンスがあやふやだった時代、科学の進歩には必ず人間の弱みにつけ込んだダークサイドが付随した。そして、我々はそこにこそ惹かれるのだ。 ショーケン、北野武、尾崎豊、朝青龍、清原和博、ショーンK…。私がフォローする著名人がことごとくダークサイドに堕ちてしまう昨今。尊敬する科学者がダークサイドに足を踏み入れないよう、「フランケンシュタインの誘惑」で予習しようと思った次第である。
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