772.リニューアル(2016.5.30掲載)
商品のリニューアルは新商品の発売より難しいといわれている。 まず、売れない商品のリニューアル。徹底したマーケティングと最高の技術で生み出した新商品が売れない時、引導を渡された開発者の苦悩が始まる。これ以上どこをどう改良すればいいのか。いっそ廃番にしてほしい。 さらに難しいのが売れている商品のリニューアル。そもそも、なんで売れているのにリニューアルするのかと開発者は不満を吐く。それは、食品の場合「美味しいものほど飽きる。売れているものほど飽きる」というセオリーがあるから。 美味し過ぎず、適度にぶれる家庭料理と違い、外食、コンビニ、加工食品は徹底的においしく、ぶれない。だから必ず飽きられてしまう。売れているからこそのリニューアルなのだ。 懐かしの「ベビースターラーメン」も、リニューアルには手を焼いてきた。 1959年発売のベビースターラーメン。駄菓子屋の帝王の座に甘んじることなく、時代に合わせて少しずつ塩分を減らしてきた。そして、1988年にはチキン味に加えてカレー味とみそ味を追加。つまみやすいように固めた「ベビースターラーメン丸」もヒットした。 ところが、2010年のリニューアルは大失敗。本物のラーメンに近づけるというコンセプトで麺を太くしたのだが、何十年も食べ続けているヘビーユーザーが離れてしまった。定番客は本物が食べたいわけではなく、駄菓子屋のベビースターラーメンを求めていたのだ。 麺の太さは2ヶ月で元に戻った。 亀田製菓「ピーナッツ入り柿の種」も、1966年の発売当初はあまり売れず、1977年に窒素ガス充填した個包装6袋入りが大ブレイク。 ただ、ピーナッツと柿の種の配合比率はリニューアルで迷走。発売当初は「柿の種7:ピーナッツ3」だったが、もっとピーナッツを食べたいという消費者の声を受けて「5:5」にリニューアル。これが不評で、結局現在は「6:4」に落ち着いている。 上位2割の定番品が全体の8割の売り上げを稼ぐといわれる食品業界。ヘビーユーザーの声に耳を傾けつつ、自信を持ってリニューアルに挑戦しなければならないのである。
\\\\
|
column menu
|