773.価値を生む仕事(2016.6.6掲載)
常々、「価値を生み出すのが仕事、価値を生まないのは作業」というフレーズをお題目のように唱え、職場スタッフに気合を注入している。 とはいえ、消費者に認められ、高いお代を払ってくれる価値を生み出すことは容易ではない。地味な加工食品分野では特に。 そんな食品業界で、教科書的成功事例として紹介される商品にA社の「ピュアセレクトマヨネーズ 65%カロリーカット」がある。文系のマーケッターと理系の研究員がコンビを組んで、画期的な価値を生み出した商品である。 まず、マーケッターの企画力が生んだ価値。 マヨネーズの主成分は卵と酢と油。そこで、卵の鮮度感をアピールポイントにした。キャッチコピーは「とれて3日以内の国産新鮮たまごだけを使用」。「生みたて」は無理でも「とれたて」ならなんとかなるだろうと鶏卵業者と交渉し、物流を整え、工場を説得した。 世界第2位の卵消費国で、生卵を好んで食べる日本の消費者は、卵の鮮度にうるさい。「3日たまご」の価値はすぐに受け入れられ、売上増につながった。 次に、研究員の技術力が生んだ価値。 マヨネーズのカロリーを下げるため、単純に油の配合量を減らしたのでは味が落ちてしまう。そこで、油の中に水を閉じ込める技術を開発した。具体的には、酢の中に浮かぶ油滴の中に水を閉じ込め、酢/油/水という「Wエマルジョン」状態を作ったのだ。 水を注入することで油の含量が減ってカロリーも下がるが、水が油の中に包まれた状態だから油滴のサイズ自体は変わらず味もほぼ同じ。すごい価値である。 さらにすごいのは、油を水に置き換えた分、原材料費が下がったということ。安くできるのだから、メーカーにとっての価値も生まれたことになる。 普通の3日たまごマヨネーズが400gで200円。65%カロリーカットが360gで265円。価値があるから高くても売れる。けど、原価は安い。 価値を生み出し、高く買ってもらい、儲けてお給金を上げてもらう。 これが「仕事」なのである。
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