784.おもてなしのアスリート(2016.8.29掲載)
今年の4月、アルゼンチンで開催された「第15回世界最優秀ソムリエコンクール」の様子が、NHKBS1スペシャルで詳細に紹介されていた。 優勝は、ニューヨーク「チャーリー・バード」のヘッドソムリエを務めるスウェーデン代表ローゼングレン選手。2位はフランス代表ビロー選手、3位はアイルランド代表デュプイ選手だった。日本人は森選手(コンラッド東京)が8位で石田選手(ホテル日航大阪)が13位。 審査の対象は接客技術とワインのテイスティングが基本であり、出題されたワインの味と香りと色から「産地、ブドウ品種、生産年」を推測し、相性のいい料理を提案する。「ピノ・ノワール、ブルゴーニュ、2004年。これには鴨肉のローストがぴったりです」という感じで。 厄介なのは、客に扮する審査員が出題するオーダーの随所に仕掛けられた巧妙なトラップ。 オーダー1.「超辛口(エクストラブリュット)のモエシャンドンを下さい」 トラップ1.モエシャンドンに超辛口は存在しない。 模範解答1.最も糖度が低く超辛口に近い2006年のモエを勧める。 ノンビンテージは糖度9だが2006年は糖度5という知識が求められる。もちろん、「超辛口ではないのですが」とのコメントを添えることも必要。 オーダー2.「おすすめのシャンパンを出してください」 トラップ2.卓上のグラスに少量のシャンパンが残っている。 模範解答2.グラスを新品に差し替える。 意外なことだが、テイスティングに集中するあまり、卓上のグラスに飲み残しのシャンパンがあることに気づかず、そのまま注いでしまう選手が多い。 オーダー3.「舌平目のムニエルに合うワインは赤白どちらですか」 トラップ3.一般的には白だが、主賓はどうしても赤が飲みたいという。 模範解答3.わかりました。ムニエルに柑橘を添えて赤に合わせましょう。 単に客のわがままを受け入れるだけでは勧めた意味がなくなる。ひと手間かけて合わせる。赤ワインを冷やすという選択もいい。 そうだ、だしのソムリエ制度をつくってコンクールを開催しよう。例えば、オーダーは「うるめ煮干しとかつお煮干しのだしで味噌汁」。トラップは「かつお煮干しは存在しない」。 トラップの妄想ばかりが膨らむのである。
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