792.いろいろなドラマ(2016.10.24掲載)
食品パッケージを設計する際に気をつけることは、中身がおいしく見えることと、食欲をそそる色であること。例えば、花かつおのピンク色は赤色系のデザインでより映えるし、いわし削りは青色系がよく似合う。 飲食店でも器の色使いは重要で、白地に青色で絵付けされた皿は青色部分が10から20%だと食欲をそそるが、真っ青なお皿は食欲を減退させる。 もちろん、食材の色が鮮やかであれば、パッケージや器でごまかす必要などないのだが…。 ところで、食材の色の成り立ちはさまざまだが、2つの物質がひっついたり離れたりすることによって色を形成する場合がある。 前者の例がかつお節。かつお節は生のカツオを湯で煮た後、煙でいぶすことによって作られるが、煮た直後のカツオは煮魚の肌色。この色が、煙でいぶされることによって鮮やかなピンク色になる。 カツオ筋肉中のミオグロビンが、煙の中の一酸化炭素とひっつくことによって発色するのである。このミオグロビン、普段はせっせと酸素を運んでいるのだが、ひとたび一酸化炭素を見つけるとあっさりと乗り換え、バラ色、いやピンク色の人生を選ぶ。生体にとって、中毒を起こして危険きわまりない一酸化炭素がそんなに好きなのか。バラ色の人生にはリスクがつきものなのかも知れないな。 一方、離れて色が出る例がエビとカニ。甲殻類を煮ると、タンパク質とひっついていたため本来の色を出せなかったアスタキサンチンという色素が熱によってタンパク質と離れ、赤い色となる。切られて本領発揮。逆境をプラスに変えるタイプかな。 かつお節とエビ、カニ。どちらも赤い色を出すことで人々の食欲をそそり食卓を幸せにするのだから、ひっついたり離れたりすることの意味は大きい。 連日ワイドショーで報道される浮世の情話を見るより、海幸の色に秘められたロマンを想像する方がよっぽどいい。 色にもいろいろなドラマがあるのだ。
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