794.テクノ化石(2016.11.7掲載)
某国立大学で地質学の教授をやっている知人が、最近妙に騒がしい。 いつも地層を掘り返していて地味な土木関係者という印象しかない彼が、「近いうちに地質年代表が変わるぞ!」とハイテンションなのだ。 地質年代表とは、地球が形成されてから現在までの46億年を地質学的に時系列分類した表。 例えば、古生代カンブリア紀は4〜5億年前で三葉虫の全盛期。恐竜が跋扈したのは1〜2億年前の中生代ジュラ紀で、隕石落下で恐竜が絶滅した6600年前に中生代白亜紀は幕を閉じた。 そして、現在は最終氷期が終わった1万1700年前から続く新生代第四紀完新世だが、人類の痕跡が明らかな1950年頃に境界線を引き、「人新世」という新たな世代を設定すべきではないかというのだ。 ちなみに、後世の未来人が人新世の地層を掘り返して目にする人工物を「テクノ化石」と呼ぶらしいが、現人類の残骸を見て未来人はどう思うのかな。 第2次世界大戦以降に人類が製造したアルミニウムの総量は5億トン。地面や埋め立て地に捨てた空き缶や電化製品、タバコの箱の内張り等の純アルミニウムが堆積層の一部を占めるようになっている。 また、プラスチックの年間生産量は約3億トンで、これは全人類の体重に匹敵する重量。さらに、人工の岩石であるコンクリートは至る所にあり、人類はこれまでに5000億トンものコンクリートを製造してきた。地球表面1平方メートルあたり、約1kgのコンクリートが存在する計算だ。 やっかいなのは化学的痕跡としての農業肥料、殺虫剤やダイオキシン。そして放射性廃棄物。 未来の地質学者の健康被害を気遣う余裕はあまりないが、せめて放射性廃棄物の危険性は伝えねばなるまい。数万年、いや数億年後の人類にどんな言語で、どんな記号で伝えればいいのか。 地質年代表の改訂より先に、この議論が必要なのかもしれない。
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