803.徳川家斉(2017.1.16掲載)
数年前から各方面でテレビ時代劇の衰退を嘆いてきたが、願いが通じたのか最近怒涛のNHK時代劇ラッシュである。 昨年末に「子連れ信兵衛2」全7回が終わるやいなや、年明けから「雲霧仁左衛門3」全8回がスタート。並行して「忠臣蔵の恋」「花嵐の剣士」「幕末グルメ ブシメシ!」が放送中ときたら、もうパラダイス。 ところで、時代劇とひと言で括っているが、そのシリーズは一体いつの年代の物語か把握しているだろうか。江戸時代は約260年間で昭和の4倍以上。時代背景でセットや小道具が大きく変わってしまう。 「徳川家康」「暴れん坊将軍」「元禄繚乱」「新選組!」などはタイトルから即年代がわかるが、「武蔵」「子連れ狼」「赤ひげ」はいつ頃か?正解は、順に徳川家康、徳川綱吉、徳川家斉の時代である。 ここで興味深いのは、11代将軍徳川家斉の時代(1787〜1837)に作品が集中しているということ。「赤ひげ」以外にも、「座頭市」「桃太郎侍」「銭形平次」「木枯し紋次郎」「眠狂四郎」「鬼平犯科帳」「必殺仕事人」「大江戸捜査網」「子連れ信兵衛」等々。徳川家斉は大した将軍ではなかったが、作品は名作ぞろいである。 家斉時代に集中する理由を挙げてみた。まず、寺子屋の普及で識字率が向上し、浮世絵の発展も相まって当時の様子を再現するために必要な資料が豊富に揃っているということ。 そして、居酒屋、蕎麦屋、うなぎ屋、相撲、歌舞伎、旅行など、庶民の娯楽が発展し、ストーリーに盛り込みやすいということもある。 また、目明かしや岡っ引きと呼ばれる奉行所の末端組織が充実し、渡世人とのやりとりや悪人の捕り物が描きやすい。さらに当時はインフレで、銭を投げても罪悪感がなかったから銭形平次が設定できたというオマケもある。 ところで、テレビ時代劇の金字塔といえば「水戸黄門」。時代考証は甘いかもしれないが、実はこの番組、黄門様をおじいちゃん、助さん格さんをその孫としてイメージしたホームドラマ路線だったらしい。 時代劇はなかなか奥が深いのである。
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