806.見える見える(2017.2.6掲載)
ある科学雑誌に掲載された「最近のいくつかの研究は、植物に視力があることを示唆している」という驚きの記事を見た瞬間、昭和43年に流行ったゼブラボールペンのCMを思い出してしまった。 「見える見える」 ただこれだけのキャッチコピーとともに、真っ黒な画面上で白目のイラストが左右にぎょろぎょろする映像は、インクの減りが見える画期的な透明ボールペンを告知するに十分なインパクトだった。 つまり、植物に視力がある=葉っぱに付いた目が「見える見える」とあたりを見渡すというホラーな状況が、50年前の映像を想起させたのである。 1907年、チャールズ・ダーウィンの息子フランシス・ダーウィンは、レンズのような細胞と光感受性細胞が組み合わさった器官が木の葉に備わっているという仮説を立てた。1世紀を経て、この仮説が証明されつつあるのだ。 ボン大学のバルーシュカらは、シロイヌナズナ属の植物などが、「眼点」の発達と機能に必要なタンパク質を作っていることを示した。眼点とは、一部の単細胞生物に見られるごく基本的な目のこと。 また、木に巻きついて伸びるアケビ科のつる性植物は、自分の葉の色と形を宿主植物の葉に似せて変えられるという報告もある。 植物が視力を獲得しようとする目的は何か。ゼブラボールペンをリスペクトしつつ、共に昭和43年にヒットしたCMのキャッチコピーにそのヒントがないか、いろいろ妄想してみた。 「大きいことはいいことだ(森永エールチョコレート)」…大きく育つために全体を見渡す。 「わんぱくでもいい たくましく育って欲しい(丸大ハム)」…過酷な環境下でワイルドに育つたくましさを身につける。 「お正月を写そう(フジカラー)」…目標とする植物の晴れ姿を目に焼き付ける。 50年前のCMといい、100年前のダーウィンJr.といい、未来を切り拓くヒントは過去に散らばっていることを痛感した次第である。
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