821.母の食育(2017.5.22掲載)
幼時、母がしょっちゅう口にしていた食に関する教訓が3つある。 「玉ねぎを食べると頭がよくなる」「ひじきを食べると髪が黒くなる」「肝を食べると目がよくなる」 食品の研究を生業にして30年、玉ねぎ天才説とひじき黒髪説の根拠はいまだに見つかっていない。玉ねぎもひじきも強力な抗酸化活性を持ってはいるが、酸化を抑えただけじゃ頭も髪もよくならないだろう。 対して、効果が間違いないのが肝の視力向上。特に、全ての食品の中で圧倒的なビタミンA含量を誇る鶏肝がいい(100g中含量=鶏肝14mg、豚肝13mg、あん肝8.3mg、牛肝1.1mg)。 痛風を恐れるあまり鶏肝を避けるメタボリック諸君、他で節制していれば恐れるに足らず。ストレートに目に届くビタミンAを鶏肝から摂ろう。 なぜビタミンAが目にいいのか。それは、網膜中の視細胞に存在するビタミンAの酸化物「レチナール」が屈伸運動することで、人間が光を感じているから。 ふだん、視細胞中のレチナールは体を曲げた不安定な状態で存在しているが、光が当たるとエネルギーを得て体をまっすぐに伸ばす。この屈伸運動が信号となって「見えたよ〜」と視神経に伝えられる。つまり、「物が見える」という現象に、ビタミンAの構造変化が直接関与しているのだ。 パソコン仕事に目をしょぼつかせた後、酩酊のお供に鶏肝3つ。今夜も昭和の食育を実践する。 あと2つ、母の小言を思い出した。 「テレビは離れて見なさい」「食べてすぐ横になると牛になるよ」 至近距離でパソコン画面と格闘し、ウサギ小屋で大画面テレビを見る日本の家電事情を考えれば、画面から離れることは不可能。そして、食後はゆっくり横になる方が消化吸収にはプラスだ。 とすると、この2つは「はしたない」行動を戒めるしつけかな。 食育でもしつけでもいい。 全国のお母さんに「かつお節を食べると立派な人間になれるよ」と語ってほしい今日この頃である。
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