825.見ぃつけたっ(2017.6.19掲載)
喜ばれるお土産ランキング東京編、てな感じの調査をすると必ず上位に選ばれるのが「東京ばな奈見ぃつけたっ」。 有名パティシエ監修のこだわりスィーツに比べればかなり安っぽく、スポンジケーキ+バナナカスタードクリームで8個入り1080円。特別うまいというわけでもないのに、1991年の発売以来売り上げを伸ばして今や年間生産量3000万本。 敷居の低さで「買いやすさ」を演出し、昭和のバナナ世代にダーゲットを絞ったマーケティング戦略がよかったのかな。 そう、昭和の日本人はバナナに弱い。病気の時しかバナナを食べられなかった人。遠足の時、バナナはおやつかどうか迷った人。バナナの叩き売りに吸い寄せられた人…。さっちゃんだけじゃない。みんなバナナが好きなんだ。 ところで、バナナは大学の農学部における育種学講義ネタとしても絶大なる人気を誇る。それは、何もしなくても種なしだから。 ふつう、植物が子孫を残すために生殖細胞を作る場合、減数分裂を起こし染色体の数が2組から1組になる。この生殖細胞が別の個体の生殖細胞と合体して染色体の数が元に戻る。両親の性質を受け継いだ新しい個体「2倍体」の誕生である。 ところが、まれに染色体が2組のまま合体し、合計4組できてしまう場合がある。これは「4倍体」。4倍体が減数分裂した生殖細胞と、2倍体が減数分裂した生殖細胞が出会うと、2+1で「3倍体」ができる。3倍体は染色体のセット数が奇数だから正常な減数分裂が起こらない。だから生殖細胞ができず、種もない。ふだん食べているバナナは3倍体ということだ。 バナナは自然交配の末に偶然3倍体となった種なしのお手本なのである(ちなみに種なしスイカは人工的に3倍体をつくる)。 そんなお手本3倍体のバナナであるが、種がないことが欠点にもなる。種がないバナナを殖やすには株分けしかない。だから遺伝的に全く同じものだらけ。遺伝子の多様性がないということは病気に弱く、絶滅も考えられなくはない。 もし絶滅したら、また3倍体バナナを探そうではないか。 3倍体バナナ見ぃつけたっ。
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