834.メイクアップイノベーション(2017.8.28掲載)
食品業界の最新トレンドとして、「マイクロ粒子」というものがある。 これは、粉末入りの緑茶飲料に代表される超微粉砕技術で、1ミリの1000分の1であるマイクロメーターレベルの粉末を商品に配合し、風味を向上させるという加工技術。 石臼で挽いたような数ミクロンの粉末が食品業界を変えようとしているのだ。 ところがどっこい、化粧品業界の技術はそんなもんじゃない。マイクロのさらに1000分の1、「ナノ粒子」である。キーワードは光の散乱。 ヒトの皮膚は細胞や線維、色素などさまざまな部品で構成されていて、光が入射するとこれらの部品の境界面で何度も何度も散乱しながら拡散していく。昔の化粧品ではこの皮膚上の自然現象が再現できず、バブル期のような野暮ったいベタ塗りメイクになっていた。 これがナノ粒子で一気に解決。酸化鉄、酸化チタンなどの無機顔料や、サンセットイエロー、赤色201号などの有機顔料を数十ナノメートルサイズにすることで光が乱反射し、透明感のあるナチュラルメイクが完成するのである。 ソフトフォーカス効果ってのもある。これは、写真を撮る時に焦点をわざとぼかして軟らかい感じに仕上げるワザをイメージし、粘土鉱物であるタルクやマイカをアクリル系の球状ポリマーでコーティングし、光の拡散で皮膚上の陰影をぼやかして小じわを見えにくくする技術。 さらに、真珠の透明感を真似たパール顔料も開発された。炭酸カルシウム結晶とタンパク質の乱反射で、ナチュラルメイクは進化したのだ。 恐るべし化粧品業界。 美の追究は食欲を上回り、微細技術は食品の1000分の1スケールで高付加価値を実現した。 加工食品も負けてはいられない。ナノサイズの泡「ナノバブル」で牡蠣を殺菌する技術が実用化されてはいるが、次は味だ。 ナノサイズの粉末で味の乱反射を引き起こし、調味料をたっぷり使用してもナチュラルな味に感じる技術などいかがだろう。 あこぎな妄想が頭を駆け巡るのである。
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