855.バレンタインハニー(2018.2.5掲載)
昭和56年2月14日、207ホームの教室に入ると待ってましたと女子一同がチョコをくれた。 当然、クラスの男子全員に行き渡る思いやりの「形式チョコ」。まだ「義理チョコ」という言葉がなかった時代の、3月14日に義理チョコ10倍返しの義務がなかった時代のほのぼのシーンだった。 平成29年2月14日。こんな日に渋谷を闊歩してしまった。やっぱり来るんじゃなかった。クリスマスほどじゃないだろうと、たかをくくっていたが甘かった。街ゆくカップルのベタベタぶりは、義理チョコしか当てのないおじさんには少々ウザい。 そして、道玄坂の信号待ちで、彼女のことを「ハニー」と呼ぶバカ男を発見した。全く不埒。我らがバイブル、三島由紀夫先生の「若きサムライのために」を渡してやろうかと思ったが、オヤジ狩りがこわいのでやめた。 ハニーといえばハチミツだが、ハチミツはそんなにベタベタひっついちゃいない。 ハチミツの甘味を解く鍵は「離れる」こと。これは、ハチミツの甘味成分である転化糖が、花の蜜の砂糖を果糖とブドウ糖という別々の単位に離したものだから。つまり、ハチは砂糖を果糖とブドウ糖の1:1混合物である「転化糖」に変えるのだ。 2つの糖がひっつくと砂糖、離れると転化糖。そして、転化糖になると甘味が砂糖の1.3倍になる。これは果糖の甘味が砂糖の1.7倍、ブドウ糖が0.7倍であることに起因している。離れると甘くなる不思議。 ちなみに、砂糖に1.3%の転化糖をふりかけたのが上白糖。甘味が強く、ちょっとしっとり。 件のカップルに「ひっついているばかりが恋愛じゃないよ」と、離れても甘いハチミツか、しっとり甘い上白糖を渡してやろうかと思ったが、やっぱりオヤジ狩りがこわいのでやめた。 ドラッグストアの有線放送から、国生さゆりの「バレンタインデーキッス」が流れていた。
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