862.裏技の教科書(2018.3.26掲載)
最近、ラジオやテレビ、市民講座なんかに呼ばれた時「だし取りは簡単」と繰り返し語っている。しかも熱く。 「削りぶしと昆布を一緒にして5分くらいぐつぐつ煮込んでギュッと絞るだけ」 こう説明すると、当然のように「教科書と違う」というクレームが来る。 教科書的には、切り目を入れた昆布を水と一緒に鍋に入れ弱めの中火→煮立つ直前に昆布を取り出す→削りぶしを入れて弱火にする→1分煮立てる→絞らずにこし取る。 ややこしいではないか。だし素材をたっぷり使える高級料亭なら、こんな上品で繊細なだし取り法でもいいが、少ない量で気軽にがっつりだしを効かせるには煮込んだり絞ったりした方がいい。 料理本のベストセラー、渡邊香春子先生の「調理以前の料理の常識」でも、だし取りは前述のややこしい方法だった。タイトルには「和風のだしは世界一簡単!」とあったが。 この料理本、だし取り以外の項目では裏技満載でかなり参考になる。 事例を紹介すると…。 卵の丸い方の殻の内側には気孔と呼ばれる空間があり、卵はここで呼吸し鮮度を保っている。よって、冷蔵庫では丸い方を上にすると鮮度が長持ちする。 切り身魚は洗わないが貝類は洗う。 キノコ類は洗わないが、なめこは洗う。 野菜を茹でる時、大根、人参、カブ、ゴボウなど土の中にできる野菜は水から茹で、ほうれん草、アスパラ、白菜など地面より上にできる野菜は湯から茹でる(ただし、かぼちゃとトウモロコシは地面より上にできるが水から茹でる)。 茹でる…しっかり加熱。 ゆがく…茹でるよりも短時間で火を通す。 塩少々…親指と人差し指の2本でつまんだ量。 塩ひとつまみ…親指、人差し指、中指の3本でつまんだ量。 渡邊先生のプロフィールに「伊東家の食卓のフードコーディネーター」とあった。「伊東家の食卓」は、裏技クッキングのコーナーなんかがあった日本テレビ系の教養バラエティ番組(1998〜2007)。 教科書に載る日を目指して、だし取りの裏技を語り続ける所存である。
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