866.怪しい名前(2018.4.23掲載)
先日、ある食材問屋が魚由来のコラーゲン素材を売り込みにきた。 「魚のコラーゲンで、いい出物があるんですよ」 原料をたずねた。 「イズミダイのウロコです。マクドナルドのフィレオフィッシュを加工している工場からウロコを回収しています」 なんか怪しい。 そもそもイズミダイはタイの仲間ではなく、ティラピアという正式名称を持つアフリカ原産の淡水魚。2000年のJAS法改正で、タイと呼べるのは「マダイ」「クロダイ」「キダイ」「チダイ」の4種のみとなっていて、「イズミダイ」だと表示違反になる。 でも、表示が「ティラピア」のコラーゲンなんて売れないだろうな。なんだか妖怪みたいだし。 他にも、このJAS法改正で「銀ムツ」「アマダイ」「シロスズキ」「クロカンパチ」などの売り上げが落ちた。それぞれ「メロ」「キングクリップ」「ナイルパーチ」「スギ」という正しい名前に改名させられたのだ。 町内に必ず1軒はあった魚屋さん。幼時、そのおっさんとの会話で魚の名前を覚えたりした伝統的魚食民族にとって、やっぱり「メロ」は受け入れがたい名前である。 食べると結構おいしいし、切り身やフライにされるとわからなかったりするのだが、「奥さん、いいナイルパーチ入ってるよ」じゃ、威勢のいい朝の風景があぶない秘密パーティーみたいになってしまう。 ということで、魚コラーゲンは手つかず。マクドナルドのフィレオフィッシュでイメージアップを図ったセールストークだったが、実際にマクドナルドが使用している魚はティラピアではなく、「アラスカンポラック」というスケトウダラの一種。 日本における水産物の自給率は56%で食料全体の38%よりはましだが、輸入しなければ日本の食卓は成り立たない。 いたるところ怪しい名前の輸入魚ばかりなのである。
\\\\
|
column menu
|