868.裏を見る(2018.5.7掲載)
裏を見る職業病というのがある。 まずは、加工食品メーカーの社員。 スーパーで、コンビニで、時にはお呼ばれした先のリビングで裏を見てしまう。裏とは、食品パッケージの裏側に書かれている一括表示や賞味期限などの情報。気になって仕方ないのだ。 先日も、いとこの家で出された個包装の和菓子をひっくり返し、「これにもトレハオース使われてるぜ」とひとりごちてしまった。 裏面からは、実にさまざまな情報を得ることができる。一括表示欄の産地表示や調味料、保存料を確認しつつ、自社製造か下請委託かを見る。賞味期限の日付から商品の回転率なんかも推測できる。まぁ、それを見たからといってどうなるわけでもないが、職業病だから仕方ない。 そして、保健所の衛生監視員。 飲食店や弁当工場の衛生状態を調査する際、決まって建物やホールの裏側を見る。原材料の在庫スペースや従業員の休憩所など、バックヤードには本音と素性が出るらしい。 告知された立ち入りの日時に合わせて完璧に整理整頓しても、表と裏ではそのレベルに微妙な違いが出るそうだから、「お里が知れる」立ち居振る舞いには注意せねばと肝に銘じるのである。 意外なところで果樹農家。 果樹園を営む知人が、「いやぁ、この季節になるとついつい裏を見ちゃうんですよ」と言っていた。春先になると柑橘類の葉の裏に繁殖する小さなミカンハダニをチェックし、農薬散布の時期を計るらしい。 これまたお呼ばれした時なんかに、その家の庭木が気になり気がつけば柑橘類でも何でもない葉の裏をチェックしてしまうのだそうだ。 こういう無意識のうちにやってしまう行動で、その人の職業がばれるということがたまにある。 メーカーと保健所と果樹農家。「裏」稼業という共通項で結ばれる不思議な関係なのである。
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