874.唐辛史(2018.6.18掲載)
韓国を旅すると、ガイドさんが「わが国に古い寺が少ないのは秀吉軍に破壊されたからです」と説明し、秀吉好きの日本人は悲しくなる。 しかしこれは明白な歴史歪曲。李氏朝鮮は仏教を大弾圧し、1万以上あったといわれる寺院は、秀吉軍が朝鮮に入る前に36ヵ寺にまで減らされていたのだ。 とにかく日本人は秀吉が好きである。このことは、NHK大河ドラマの歴代秀吉役を見てもわかる。 1965年の「太閤記」から2016年の「真田丸」まで順に、緒方拳、浜田光夫、中村芝鶴、火野正平、緒方拳、西田敏行、武田鉄矢、勝新太郎、藤岡琢也、仲村トオル、仲村トオル、竹中直人、香川照之、柄本明、笹野高史、岸谷五朗、竹中直人、小日向文世。 トオルちゃんはちょっとカッコよすぎるけど、すごい顔ぶれだ。 なのに韓国では悪役。知り合いの韓国人曰く、「全ての小学校教科書に秀吉のことが悪人として書かれている。秀吉は最も有名な日本人だ」。 たしかに朝鮮出兵は豊臣政権の崩壊を招いた愚策かもしれない。けど、秀吉は我らが庶民のヒーローなんだ。 ただ、「秀吉は一ついい物をもたらしてくれた」とその韓国人。なんと、秀吉は朝鮮半島に唐辛子を広めたというのだ。 秀吉軍は朝鮮出兵の際、朝鮮民族を毒殺する「兵器」として南蛮渡来の唐辛子を持ち込んだ。辛い物を食べない当時の日本人にとって、激辛の唐辛子はまさに「毒」。唐辛子の粉末を敵の顔にぶつけたり、風上で唐辛子を焼いたりもしたらしい。 しかし、皮肉にもニンニクやショウガなどの食習慣がある朝鮮民族にとって、唐辛子は逆に体を健康にする気付け薬となり、勢いがついて秀吉軍を撃破した。そして、透明だったキムチが唐辛子色になった。 その後、日本の唐辛子食は朝鮮半島から逆輸入されることになる。 「露と落ち露と消えにし我が身かな 浪速のことは夢のまた夢」 2度目の朝鮮出兵の翌年、日本史上最高の出世人は、この辞世を残して露と消えた。しかし、唐辛子は決して消えることなく半島の国民食となった。 意外な唐辛史に驚いた次第である。
\\\\
|
column menu
|