879.ライバル(2018.7.23掲載)
若者が食事にお金をかけなくなって久しく、販売ターゲットを若年層から中高年に変更することが食品業界の常となっている。 若年層はコンビニよりドラッグストアを好み、食費を削ってスマホなんかの支払いを工面する。今や、食品のライバルはどこに潜んでいるかわからない乱世なのだ。 食品メーカーの製造現場でも、しばしば意外なライバルが出現して原材料の奪い合いとなる。 例えば、トウモロコシでんぷん。発酵によるバイオエタノールの生産が盛んになり、トウモロコシが食品業界に回らなくなった。結果、トウモロコシでんぷんを原料とする調味料や糖類が高騰。バイオエタノールと縁の薄い日本国内ではピンとこないライバル出現だった。 エネルギー市場は手強い。他にもシェールガスの掘削にグアーガムという増粘剤が使用されるようになり、価格が15倍に高騰した。環境に配慮する米国では、天然の増粘剤を使用することを免罪符に掘削を進めたい思惑もある。エネルギー問題が、増粘剤を配合するアイスクリームやドレッシングの製造コストを上げてしまったのだ。 思惑が外れたライバルもいる。加工食品の包装容器に使用されるポリビニルアルコールという資材は酸素を透過しない特性で品質保持に威力を発揮してきたが、ある時、液晶パネル業界から高値オファーを受け、食品業界からの決別を宣言してしまった。 しかし、リーマンショック以降、日本の液晶パネル産業は失速。出戻った食品業界でも居場所がなく、ポリビニルアルコールは苦戦を強いられている。 そして、最近では「エバール」という機密性包材も食品業界から出て行ってしまった。家庭用冷蔵庫の断熱材用途の方が儲かるのだと。 また、業務用の貸し冷蔵庫がカーボンファイバーに占拠され、食品原料を受け入れてくれなかったという事例もある。 ライバルは、いつどこに現れるかわからない。 逆に考えれば、チャンスはどこにでもある、と肝に銘じる次第である。
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