882.ウンバラカダ(2018.8.20掲載)
昔のアルバムを見ていたら、1970年の大阪万博の写真にたどり着いた。 小学校1年生の夏、炎天下の行列を避け、がらがらのセイロン館で一息つく母と私のツーショット。 1972年にスリランカに国名が変わったセイロンだが、この国の料理には日本同様たっぷりかつお節が使われるから、今の仕事を考えると不思議な縁を感じてしまう。 スリランカのかつお節は主にモルジブ産のもので、地元では「ウンバラカダ」と呼ばれている。ちょっと水分が高いが日本のかつお節のルーツ。スリランカの家庭では、このウンバラカダを石臼でつぶし、調味料としてさまざまな料理に使用するのだ。 実際に味わうべく、スリランカ料理の専門店「コートロッジ」を中野にたずねた。 テーブルに着き「かつお節を使った料理ください」と言うと、「それはポルサンボールね、ライスと一緒に食べるよ」と片言の日本語。そして、10分ほどしてライスと一緒に出てきたポルサンボールとやらは、そぼろタイプの激辛ふりかけで強烈なオレンジ色。 そぼろ状のものはココヤシの実を砕いたもので、その中にウンバラカダの粒が入っている。「こんな激辛じゃかつお節の味なんかわからない」と店員に迫ってみたが、「辛いよ。でもかつお節入れないとポルサンボールじゃないね」と、白い歯を光らせながら丸め込まれてしまった。 スリランカのかつお節とココヤシとの関わりは料理だけではない。煮たカツオを煙でいぶす際のくん材として、ココヤシの木がよく使われる(日本では樫、桜、クヌギなどの広葉樹)。 南国イメージの典型ともいえるココヤシと日本料理の心かつお節。この意外な取り合わせがこの国の文化なのだ。 スリランカのかつお節のことをもっと知りたくなり、店を出る時「ウンバラカダもらえませんか」と言ってみた。 「それはダメよ」と白い歯が笑っていた。
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